「今回は他社さんに発注をさせていただくのですが、いわばそれはトライアルのようなもので、実際にやってみないと分かりません。うまくいかないかもしれないですし。…ですので、結果次第ではまた御社からもご提案をいただきたいと思います。数カ月先になるかもしれませんが、その折は、ぜひ、またよろしくお願いいたします!」

 A社の熱い営業マンは、予想通り、こう返してきました。「はい! 次も頑張りますので、何かありましたら気軽にご相談ください!」

A社の営業は次も頑張ると言ってくれている

 先ほどのエピソードは、実際に私が発注者として経験した話です。A社とB社、どちらを選ぼうか、迷いに迷いました。本当に、甲乙つけがたかったのです。両社を比較してみると、このような感じになりました。

◇業界内順位は A社>B社
◇サービスは A社<B社
◇営業担当のレベルは A社<B社
◇価格メリットは A社>B社

A社もB社も甲乙つけがたい状況
A社もB社も甲乙つけがたい状況
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 しかし、どちらかを選ばなければならない私は、このように考えました。「A社の方が確かに実績はあるし、コストも抑えられるが、今回は、なるべくきめ細かく合わせてくれるB社の方が当社にとってはよいのではないか。それに、A社の営業は次も頑張ると言ってくれている」

 要するに、A社の営業の方が断りやすかったのです。

 購買する顧客側が意思決定する際には、その直前に「迷い」が生じることがあります。いくつかの選択肢がある場合、どちらを取るのか決めきれない、という状況です。

 たとえば、冒頭のケースとは別に、ある会社に発注している顧客側の購買担当者が、他の会社からも提案を受けていて、その新しい提案もまんざらではない状況を考えてみましょう。

顧客は「言い訳」を大量生産している
顧客は「言い訳」を大量生産している
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 こういうときの購買担当者は、「提案は魅力的だがリスクが高い新規のA社」と「改善の余地ありだがリスク低い既存のB社」とで迷っています。しかし、顧客側はそのままの状態ではいられません。両方の選択肢を同時に取ることはできないからです。そこでは、矛盾が生じています。

 しかし、購買担当者はこの矛盾に耐えることができません。そうすると、無難な選択肢は、「新規の会社の提案内容を既存先にそれとなく漏らして、安心できる既存先に発注する。まだ人間関係のない新規先の方が断りやすいし、理由をつけて断っておく」となるわけです。

 それによって、「提案は魅力的だがリスクが高い新規先」と「改善の余地ありだがリスク低い既存先」とで迷っていた顧客は、言い訳が見つかって楽になります。

 これは、顧客が「自分の選択・判断は間違っていないぞ」と正当化するわけです。要は「顧客は断りやすい営業マンに対して断る」ということです。

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