さて、冒頭の電話のせりふに戻ってみましょう。A社もB社も、こう切り出してきました。「先日ご提案させていただいた件ですが、その後、ご検討状況はいかがでしょうか」。この問いについて、答える側としてはどう感じるか。

 ヒーローインタビューの「今の気持ちを一言!」のような質問に対して、今の私の微妙な心理状況を一言で言うのは難しいので、とにかく「先延ばしにしたい」と反射的に思ってしまいます。なぜなら、私は迷っている状態で、どちらにするかの決断をするだけの心の準備ができていないからです。

ハッキリさせるべきことをあぶり出す

 では、もし読者の皆さんだったら、「ご検討状況はいかがですか」の代わりに、どう質問しますか。

 もし私なら、「今、おそらく迷われていると思いますが、正直なところ、『どちらかというと当社を選ぶかも』『どちらかというともう1社さんを選ぶかも』のどちらに近いですか」と質問するでしょう。

 もう少し慎重に進めるなら、この質問の後に、「あくまでも個人的なご意見で構いませんので、ざっくばらんにおっしゃってください」と付け加えるかもしれません。

 そうすると、購買側としては、「どちらかというと採用しようと思っているのか、あるいは断ろうと思っているのか」をハッキリさせることを求められるものの、現時点での個人的な意見でいいと言われているので、自分の心境を話しやすくなります。

 これによって、A社B社いずれの営業マンにとっても、自分の取るべきアクションが明確になります。要は、自社が優勢だろうが劣勢だろうが、コンペで顧客が迷っている場合、「検討状況はどうか」ということをオープンに聞くだけでは、前に進みづらいということです。

 もっとも、既に意思決定をしていてあとは伝えるだけ、となっていたら、迷っている段階を過ぎてしまっているので、特にA社からの逆転は、ほぼ難しくなるでしょう。A社の営業マンとしては、早めに顧客の感触をつかんで、次のアクションを取るようにしないといけません。

 オリンピックのヒーローインタビューであれば、「今の気持ちを一言!」でもいいのでしょうが、顧客の無難な返答からは受注も感動も生まれません。営業の大事なクロージング場面なら、ハッキリさせるべきことをあぶり出す質問が必要でしょう。

 営業にとっての感動は、やるべきことをやり切って、お客様から選ばれることによって生まれるのです。

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