実はこれ、何を隠そうトリーズに出会う前の私自身の悩みでした。そして、この解決策の1つとしては、これまでに取り上げたように、

・「相手の悩みを、“2つのパラメータに関する、矛盾した2つの要求”という形に定義(矛盾定義)」し(前々回
・(思いついた)解決策を“トリーズの発明原理”を挟んで説明する(前回

という方法でした。これを心掛けるようになってから自分のアイデアや提案が驚くほど相手に受け取ってもらえるようになりました。このトリーズを教えてくれた2人の師匠(池田昭彦さん、永瀬徳美さん)には深く感謝しています。

 ですから、私にとってのトリーズは、「超発明術」や「魔法のような問題解決方法」というよりも、相手に自分のアイデアを伝わりやすくし、共に考えるための「問題解決の共通言語」なのです。

 自分で言うのもなんですが、トリーズに出会う前から私の頭の中にはとめどもなくアイデアがわいていました。そのアイデアが自分のためのものであれば自分でプロトタイピングするなりして形にすればよいのですが、友人や同僚の相談に乗っている時に閃いたアイデアではそうはいきません。相手に伝わることで初めてそのアイデアはプレゼントになります。皆様の中にも、同様の悩みに出くわしたことがあるのではないでしょうか?

特許を発明原理で観察、共有する<特許感想文>

 悩み相談以外にも、営業の方で技術者の言っている技術的内容がよく分からない、という方は少なくないと思います。営業は技術者から聞いたことを、さらに営業先に説明しないといけないのですから、いろんな人に通じる共通の言葉でしゃべってくれ、と思うことは何度もあるのではないでしょうか?

 逆の立場、“技術をかみ砕いて、事務職(特に営業職)にも分かりやすいように説明する”というのは、技術者にとってもなかなかハードルが高いことです。私もかつてそうだったのですが、技術者はつい、自分が発明した部分すべてを語りたくなってしまいます。

 そんな時、発明原理という共通のキーワードがあると、説明のとっかかりがつかみやすくなったり、話の単位を区切りやすくなったりします。そこで今回は今までご紹介した発明原理の実践編として、技術的な文章から発明原理を使って、区切って説明する例を示します。その取り扱う「技術的文章」は、その中でも最も難解な部類に見える「特許の明細書」を題材にしましょう。そして対象にする特許は、ズバリ、前半連載していた高木誠による「コーヒー抽出器」です。

 実際の特許内容はこちらに掲載してありますが、一見してすらすらと読める方は少ないかと思いますし、この中から、(発明原理無しで)他に使える説明やアイデアをすぐに引き出すのはもっと難しいかと思います(ちなみに誠のコーヒー文献は、サントリーが国内及び海外にも出願している特許からも引用されています)。