ここまでは、既に世の中でよく知られているビジネスについてでした。最後に少し新しい方向性をご紹介したいと思います。

 私には何人かコクヨに勤めている友人がいますが、コクヨの名刺には「ひらめき・はかどり・ここちよさ」と書いてあります。同社はノートなどの文房具で有名ですが、実はオフィス器具と売り上げが半々な企業でもあります。

 「コクヨは文房具やオフィスの器具を売るのではなく、こうした文房具によってオフィスが生み出す(有用作用である)“ひらめき・はかどり・ここちよさ”を売るのだ」という目標を示したものであるようです。実際、コクヨは、単に器具を売るだけでなく、オフィスそのものの設計業務、またどのようなオフィスにするべきかのコンサルティング業務に、業務を広げているとのことです。また、渋谷ヒカリエにあるように「オフィス空間そのものの貸し出し」も行っています。まさに「製品売りからソリューション売り」になっている例だと言えます。

 このように、世の中に存在する事業やサービスについて<#2分離原理>の一形態である<有用作用の分離>という考え方で観察すると、“ソリューションビジネスのヒント”が見えてきます。

「究極の理想解」から始めてみる

 また、実はこの<有用作用の分離を考える>というのはトリーズが持つ問題解決ツールの1つである「究極の理想解(IUR:Ideal Ultimate Result)」という考え方の出発点でもあります。この考え方を使うと、自社の製品の改善策にもブレイクスルーをもたらしてくれる可能性が少なくありません。

 そこで、このIURのやり方をかいつまんで書いておきますと、改善対象(例えば自社の製品)が提供している<有用作用を分離>してみた後、その<有用作用>について、「究極の理想的な解決状態=なんのコストも環境負荷もなしに<有用作用>が提供されている状態とは何か?」と考えてみることです。

 例えばドリルの話であれば、「何の労力も道具もなしに、空けたいところにすぐ穴を空けられるとしたらどんな状態か?」と考えてみると、「ドリル改善という出発点」とは大きく離れた形で思考が始まるのが感じられると思います。そのあと、徐々に必要になりそうな要素を足していくことで、今までと全く異なる改善点が見えてきます。

 自社の製品をベースにしたソリューションビジネスを考えるときにも、この「究極の理想解」から始めてみるのも一手かと思います。究極の理想解について、手っ取り早く利用するなら石井力重氏によるこちらのページを、より詳細な内容については、高原利生氏および中川徹氏により翻訳されたLarry Ball 著 『階層化TRIZアルゴリズム』 詳細版をご参照ください。

 とはいえ、こうした「問題解決そのもののような頭脳労働」、これをどうソリューションビジネス化していくかについては、世の中ではまだあまり実現されていないので次回も考えたいと思います。

 では、今回のまとめです。

  • 需要がほぼすべて行き渡った状態では、製品の寿命を延ばすほど、売り上げが下がってしまう、というジレンマが存在する
  • 製品ではなく、製品が提供している有用作用を分離し「ソリューションとして提供」すると、製品の性能向上が利益率向上にストレートにつながる
  • ソリューションのビジネス化については、<有用作用の分離>という視点で、身の回りの事業やサービスを観察することがヒントになる。また、究極の理想解、という手法も参考になるはず

 今回もお読みいただき、ありがとうございました。