この話をすると、「学生のうちに『本当にやりたいこと』が分かるはずがない」と、指摘を受けることがあります。確かにそうです。
 社会人になって経験を積むうち、就職活動のときに考えた「やりたいこと」が変わっていくことはあるでしょうし、それは構いません。

 ただ、私たちは、社員のモチベーションの源泉として「内発的動機付け」を、最重要視しています。何かが与えられるから頑張るという「外発的動機」でなく、自分にとって興味があって面白いから頑張る。そういうモチベーションで働いてほしいと思っています。その方が、より大きな力を発揮できると確信しているからです。
 だから、例え「やりたいこと」の中身が変わっていくとしても、学生のときから、きちんと掘り下げて考えてほしい。内発的動機付けをもって、就職活動に臨んでほしい。それゆえ、アドバイザー面談にこれだけの手間をかけ、重視しているのです。

 実際、これだけのステップを踏んで内定を出せば、ほかの会社に目移りする学生はあまりいません。混乱を極めた昨年の採用戦線でも例年通り、内定辞退者が少なかったという事実は、私たちの方針が間違っていないことを示してくれた気がします。

「夢」と「現実」の関係は?

 採用では、内定を出した後のフォローも欠かせません。

 まず、8月には1泊2日の「内定者合宿」を実施。ネクストの社是や経営理念を再確認します。就職活動中から何度も伝えていますが、ここであらためて復習し、会社の目指す世界観を共有します。そして10月には「内定式」。

 内定式の後には宿題を出します。

 学生たちに1カ月かけて、ネクストの中核事業である不動産情報サイト「HOME'S」を紹介する動画を作成してもらいます。
 数人ずつのチームに分かれ、先輩社員のフォローの下、関連部署の社員や役員、ときにはクライアントにも取材して撮影。BGMやテロップをつけながら、この事業を通じて私たちが社会に発信したいメッセージが伝わるように編集します。
 11月には、動画の「発表会」を開催。社長の私や役員が評価し、優れた作品をつくったチームを表彰します。素人の手作りとはいえ、目頭が熱くなるような思いのこもった映像もあり、毎年、大いに盛り上がります。

 なぜ、こんな宿題を出すのか。

 具体的な事業に対する理解を深めるため。引いては、内定者の「夢」と「現実の仕事」を連結させるためです。

 ネクストの内定を得た学生たちが考えている「この会社でやりたいこと」は、概ね壮大です。「過疎地の活性化に貢献したい」「教育分野で新規事業をつくりたい」「医療業界に変革を起こしたい」といった具合です。いずれの夢も、会社のビジョンとマッチするから内定を出したわけで、経営トップとしては大いに歓迎します。

 一方で、新卒社員の多くが最初に配属されるのは、HOME’S事業本部をはじめとした既存の事業部門です。そこで任された仕事と、壮大な夢との間に、何のつながりもないように感じ、戸惑うこともあるでしょう。

 けれど、入社する前に思い描いた「自分の夢」や「やりたいこと」と、目の前にある現場での仕事は、決して無関係ではありません。新入社員の「夢」や「やりたいこと」は、私たちが掲げる経営理念と合致しています。そのことは、長い採用のプロセスで確認済みです。そして、そのような経営理念の実現のために、それぞれの事業があり、その事業を推進する各部門があり、その中で仕事をする個人がいる。すべてはしっかりつながっています。動画制作を通じて、今ある事業の成り立ちや意義、そこに関わる人の思いを深く知ることで、内定者にそのことを理解してほしいのです。