もちろん、私もこの状況に手をこまぬいたわけではありません。

 前回紹介したように、リクルートOBの先輩でリンクアンドモチベーション会長の小笹芳央さんからは、急成長する会社が罹患する病気について、以前から警告を受けていました。

 おさらいすると、その病気とはこういうものです。

  1. 社員数100人を超えるときに多くの会社が発症する「マネジメント不全症」=経営トップと現場をつなぐ管理職が育たず、部下のモチベーションやパフォーマンスが低下する
  2. 社員数300人を超えるときに多くの会社が発症する「既決感蔓延症」=社員一人ひとりの裁量の幅が狭まり、変革への意欲が低下。社内に無力感がはびこる
  3.  これらの予想される病に対して、私は社員が数十人だったころから予防策を講じ始めていました。それが必ずしも万全でなかったことは前回の通りですが、何も手を打っていなければ、もっとひどい事態に陥っていたはずです。急成長する会社が罹患する病に打ち克とうとする私の取り組みは、完璧とはいかずとも、一定の効果を挙げていました。

     そこにあるとき、頼りになる1人のパートナーが加わりました。今、ネクストの人事本部長を務めている執行役員の羽田幸広です。

    初対面の29歳の熱意に賭ける

     羽田との出会いは、05年夏。中途採用の面接でのことです。

     彼は当時、新卒で就職して7年目、29歳でした。前職では営業などをしていて、人事は未経験だったものの興味があり、キャリアチェンジを希望して転職活動をしていると言います。

     人事の仕事に対する夢を語る彼の話を聞いていて、私は何かひらめくものを感じました。そして思わず、胸の中でひそかに温めていた構想を打ち明けました。

     「僕さ、ネクストを『日本一働きたい会社』にしたいと思っているんだよね」
     「ところで、きみ、僕と一緒に『日本一働きたい会社』をつくる気はないかな?」

     私が、全社員に向けて「『日本一働きたい会社』をつくる!」と宣言したのは、その翌年。この時点では、私以外に誰一人知らない話です。そんな話をいきなり面接で持ち掛けられ、目を白黒させていた羽田ですが……。

     「はい、ぜひやらせてください!」と、元気よく返事をしてくれました。
     「よし、じゃあ、採用!」

     入社後は希望通り、人事に配属。私と羽田は二人三脚で「日本一働きたい会社」づくりに着手しました。

    執行役員の羽田幸広人事本部長。29歳で転職してすぐ、新しい人事制度の仕組みづくりなどを一任された