モチベーションファクターの欠落が引き金

 「上司が部下をハンドルする」と言うと、そのようなことはマネジメントの基本なので、企業内研修で実施されているという声も聞こえてきそうです。しかし、企業や団体内で今日実施されている研修が、依然として理論偏重、解説重視で、「頭では理解したつもりだが、行動で再現できない」「理屈を学ぶことはできたが、日々のビジネスの現場で役立たせることができない」といった課題が挙げられて久しく、現在では諦めの声さえ出始めています。

 そこで、逆に理論や解説は極力省いて、プログラムのほとんどを演習により進行し、極論すれば「行動で再現できるスキルを発揮して、それを通じて頭で分かってくる」「ビジネス現場で役立つスキルを実践していく中で、理屈を学ぶことができる」プログラムを開発し、展開しています。これは、身に付けるべきスキルをパーツパーツに分解し、どのようなスキルレベルの人でも簡単に修得できるようにし、これを反復演習することで着実に体得できるようにした能力開発プログラムなのです。

 プログラムの内容を少し紹介しますと、例えば上司である自分と部下との断絶の事例のプロセスマップを作成し、断絶に至った出来事を時系列に書き出していきます。そして、自分が取った行動を明確にします。その上で、断絶に至ってしまった、トリガー(引き金)となった行動を1つ選んでいくところからスタートしてきます。

 実際の演習結果をみると、そのトリガーとして最も多く挙げられたのが、「上司が指示していることと、部下が期待していることにギャップがある」という意味のことでした。

 実例を挙げると、「家庭の事情で早く帰らなければならない、休暇を取らなければならないと思っている部下に、残業や休日出勤してでも仕事をやり遂げてもらわなければならず、部の目標達成のために仕事優先で頑張ろうと激励した上司が、部下と断絶した」というケースがあります。

 また、逆に「今日のマネジメントにおいては、部下のプライベートも考慮し、無理を言ってはいけない」ということだけを覚えて、目標達成意欲が旺盛な部下に、「ほどほどにしておけ」と言ったり、「良かれと思ってタスクを減らし」たりした結果、部下からは「バカにするんじゃない」とキレられたり、異動願いが出されたりした例などがあります。

 参加者に、これらの事例をお互いに共有し、解決策を検討していただくと、「プライベート優先のプロ意識の薄い部下はいらない」「良かれと思って配慮したコミュニケーションをしたのにキレるとは、全く今の若者は何を考えているのか分からない」といった、排除や諦めの発言が必ず出てきます。

 実は、これらの真逆と思えるような事例も含めて、上司と部下との断絶の様々な事例をひも解いていくと、そのトリガーには、共通の1つのスキルが上司側に欠落していることが分かってきました。それが、相手のモチベーションファクターに応じたマネジメントをするスキルです。