「示唆質問」が部下を劇的に変える

 それでは、上司は部下に対して、目標設定面談でどのようなコミュニケーションを取ればよいのでしょうか。

 決して言ってはいけないフレーズが上司の口から出てしまうのは、部下が目標に納得しておらず、従おうとしていない場面です。部下が、その目標に取り組むモチベーションをかき立てることができていない場面で、いくら決定だ、皆従っている、上が決めたからあきらめろと言っても、モチベーションは上がらず、納得もできないことは自明です。

 実は、この状況を劇的に変えることのできるスキルがあります。そのスキルを身に付けることができれば、これまで意見が対立したり、部下を従わせることが難しかったりした状況が、がらりと変わります。部下のモチベーションを維持したり、上げたりすることができ、その結果、部下により高い目標にチャレンジしてみようという気持ちを持たせることができるのです。

そのスキルとは、「示唆質問」のスキルです。

 「示唆質問」とは、例えば「上司である自分がサポートすれば、この目標に取り組んでみようという気持ちになりますか?」とか、「判定期間を区分して、目標を細分化したらやりやすいですか?」というように、ある仮の条件や前提を示し、その条件や前提であれば、取り組んでみようと思うかどうかを質問する方法です。私がこの質問を「示唆質問」と呼んでいるのは、断定や命令ではなく、ある仮定を置いて方向性を示唆していくための質問だからです。

 この「示唆質問」のスキルを使いこなせるようになると、部下は、「このサポートを得られるのだったら目標達成に向けてがんばれるかもしれない」「この前提であれば引っかかるところがないので取り組んでみよう」という気持ちになりやすくなります。

 何より、断定や命令とは対極にあるコミュニケーションです。モチベーションを下げることなく、目標にコミットメントさせる確度を格段に上げることができる、実にパワフルなスキルなのです。

 既にお気付きの方もいらっしゃると思いますが、「示唆質問」のスキルは、1対1の面談だけでなく、多数の人が参加する会議で合意形成する場面でも高い効果があります。また、「示唆質問」の前後に繰り出すとさらに効果的なほかの質問のスキルや手順があります。

 これらは、この連載の過去の記事「第2回 1時間で必ず合意形成する(下) あなたを『会議の達人』にする」などでも紹介していますので、よろしければ参考にしていただければと思います。