「脅しのマネジメント」は通用しない

 私がこれらのフレーズを決して口に出してはいけないと確信している理由は、使った途端に、間違いなく、ほかならぬ上司が部下を著しくモチベーションダウンさせるからです。そして、大半の場合、上司としての最も根源的な使命である、部下のマネジメントが不能になり、上司としての使命を果たせない存在に成り下がってしまうことが問題なのです。

 しかし、現実にはこのようなフレーズを使っている上司が実に多いことか、年間100社から参加していただいている演習を通して分かります。それは、私には実は機能不全に陥っている上司が非常に多いという、深刻な状況であると思えてなりません。

 これらのフレーズはいずれも事実を指摘していると説明できるかもしれません。しかし、このフレーズの本意は、全く別のところにあり、多くの部下はそれを感じ取っているのです。

 「この目標は、会社の決定事項だ」。だから黙って従えと断定するフレーズは、決定に背いたら、どうなるか分かっているなという脅しのフレーズなのです。

 「みんな、この目標でやっている」というフレーズは、表現が丁寧かどうかによらず、「集団から弾かれたら、生きていけると思うな」という恫喝です。上司にはそんなつもりがなく、むしろ事実を親切に言っているつもりでも、脅しのマネジメントをしてしまっているのです。

 「私ではなく上(人事)が決めた目標だ」というフレーズも、自分にはそのつもりがなくとも、自分は無責任だということを明かしているようなものです。「文句があるなら、上(人事)に言え」というフレーズは、自分は上司の役割を果たすことができませんと言っているのと同義と、部下から受け取られてしまうのです。

 最後の決めせりふである「できないならば、そう評価するしかない」というフレーズは、評価権は上司の特権なので何が問題だと思う人もいるでしょう。しかし、それを言ったらおしまいで、「自分は評価権で脅すしか能がありません」と言っているようなものなのです。

決して口に出してはいけない一言と、それが伝える意味
「この目標は、会社の決定事項だ」⇒決定に背いて、ただで済むとは思うなよ
「みんな、この目標でやっている」⇒集団から外れて、生きていけると思うなよ
「私ではなく、上(人事)が決めた目標だ」⇒自分には責任がない
「文句があるなら、上(人事)に言え」⇒自分は上司の役割を果たさない
「できないならば、そう評価するしかない」⇒評価で脅すぞ