また、三菱重工は、ESGに関連する要素をESGに特化したページに限定せず統合報告書全体に取り込んでいる(例えばESGに特化したページ以外で国産旅客機事業が環境などへ提供する価値について言及する)。これにはESGと事業が不可分であるとの考えを示すという意図があったとされ、経産省が運営する環境報告書プラザにおいて統合報告書の優良事例として紹介されている。さらにこの三菱重工の統合報告書は、日経アニュアルリポートアウォードにおいても準グランプリに入賞しており、コーポレートガバナンス改革の実行、事業構造改革の継続が企業価値向上につながることを示し、また社会的課題と事業活動との関連を明確にする高レベルなもので、企業活動の全体像をESGも含めて分かりやすく把握できると高く評価されている。

 ESG課題に対する取り組みとしては、ESG説明会を開催することも考えられる。
ESG説明会を設けている富士通は、統合報告書を発行しているものの、報告書を出すだけでは投資家のニーズに応えられているかどうかわからないという問題意識から、双方向でコミュニケーションを取る場としてESG説明会を設けた。

 味の素でもESG説明会が開催されている。第1回となった2015年の説明会には、機関投資家を中心に30名あまりの参加者が集まった。ESG説明会では、参加者から「先進国の食を取り巻く社会問題についてどのようにとらえているのか示してほしい。先進国でも貧困問題があり、貴社が解決の一助になれるのではないか」などの質問があった。ESG説明会への参加者は同社の通常の投資家向け説明会への参加者の2倍で、IR担当者は「こんなに関心が高いとは」と驚いたとのことである。

 会社からはコストをかけて統合報告などで情報を開示しても、それによってESG投資が伸びていると実感できないとの声もある。しかし、会社が待っていたのでは投資は呼び込めない。「自ら投資家との対話に出て行くべきだ」と三井住友信託銀行のCSR担当部長は言う。

 ESG説明会には意義がある。
 統合報告で非財務情報を開示している場合でも、説明を聴くことによって公開されている非財務情報への確信度を上げる、あるいは会社の意気込みを会社から聞くことができるという意義である。

 なによりESG課題への対応について一番悩み、考えているのは経営者なのであるから、当該会社のESG課題の本質を理解するには経営者と対話をすべきなのである。

 今後、より積極的なESG説明会の会社による開催と投資家の積極的参加が期待される。

 冒頭に記述したようにESG投資市場は今後も拡大していくだろう。
 オムロンの創業者、立石一真氏は「企業は社会に役立ってこそ存在価値があり、利潤を上げることができ、存続していける」ことを信念として掲げる。その信念のもとにオムロンは、様々な国や地域の文化、そして歴史を尊重するなどステークホルダーに配慮し、また環境保護のために社会の環境負荷低減のための有用なサービス等を創造・提供してきたという。

 そもそも会社というものが社会において存在することを許されているのは、それが社会にとって有用だからである。社会に貢献するため、会社は自身が「公器」であることの自覚を持って積極的にESGに取り組むべきであろう。

■変更履歴
記事の5ページ目に一部表記に誤りがありましたので修正しました。お詫びして訂正します。該当箇所は修正済みです。[2016/12/27 16:03]