一方の投資家サイドでは、投資の意思決定に関わるアナリストやポートフォリオ・マネージャーが財務情報に注目しがちなために、SR担当者との接触の機会を持とうとしないという現象が起きている。

ESGギャップを乗り越えるには

 ESGギャップを乗り越えるにはどうすればよいだろうか。
まずは会社と投資家の双方が、お互いの認識に相違があるという前提に立って歩み寄ることが重要であろう。ESG課題への対応を主にリスクとして考える投資家と、リスク対応のみならず事業機会の手段として考える会社の間にコミュニケーションギャップがあるのはある程度仕方のないことであり、まずこれを認識することが出発点となる。

 その上で、実際に会社と機関投資家が歩み寄るためにはどのような工夫をすればいいだろうか。

 もちろん、投資家にも、ESG課題への対応がリスク対処のみならず、事業機会獲得手段のひとつとなってきていることを理解し、それを投資判断に考慮するといった工夫や、アナリストなどが積極的にSR担当者と接触することなどの歩み寄りが求められる。

 しかしまずは会社から、ESG課題への対応が将来的な収益環境に及ぼす影響を投資家に説明するなどして、投資家に働きかけることがESGギャップの克服には有効だろう。投資家の行動や対話手法は会社からの情報発信次第で変化し、会社からの情報が長期化、統合化したものになると、投資家の対話や行動も長期化するためである。

 この点において統合報告は重要な機能を果たしている。
 統合報告書を発行している会社の数は2016年9月末の時点で299社であり、2015年12月末時点では224社だったことからは、2016年末時点には320社程度の発行企業数になるのではないかとの推測がある(宝印刷の調査)。もし発行企業数が320社程度になれば1年前よりも4割強増えることになる。

 ESGギャップを乗り越えようと工夫する会社が急増しており、今後ますますの歩み寄りが期待される。

ESG課題に対する各社の取り組み

 ESG課題について、各社は具体的にどのような取組みをしているであろうか。

 三菱重工は統合報告書を作成しており、その統合報告書は特に高く評価されている。
 三菱重工は、統合報告書にて、社会の持続可能性への貢献が必要不可欠であるとの認識の下、事業活動を通じて社会的課題の解決に取り組み、社会および企業価値の双方に大きな影響を与えうる重要な課題を特定し、優先的に注力すべしとの考えを表明している。

 その上で、三菱重工の考える重要な課題の内容や、重要な課題の特定プロセス(各種国際基準やステークホルダーの意見、三菱重工グループの各部門へのヒアリングなど)を明らかにし、当該重要課題に今後どのように取り組んでいくかを報告している。