日本企業から見たESGの有用性

 コーポレートガバナンス・コード補充原則2-3①は、上場会社に対して、持続可能性を巡る課題への対応が重要なリスク管理の一部であるとの認識を持つことと、それらに適確に対処することを求めている。持続可能性を巡る課題への対処を誤ることは、会社のレピュテーション等を減損させかねないため、適確な対処と積極的な取組みを求める趣旨である。

 このようなコーポレートガバナンス・コードの要請に応じたESG課題への取組みは、会社のレピュテーション等のリスクを低減する効果を期待できるだろう。

 また、ESG課題に取組むことは、以下のように会社のROEを向上させ得るというメリットもある。

 大和総研の調査結果によれば、独立取締役の有無と実績ROEの関係について、分析対象会社全体の実績ROEは7.5%であったところ、独立取締役が存在する会社は7.9%であり、他方で独立取締役が存在しない会社は6.9%であった。独立取締役の人数と実績ROEの関係についての調査結果も、独立取締役1人が7.8%、2人が8.0%、3人以上が8.5%であり、独立取締役が多いほど実績ROEの平均的な水準が高いものとなっている。

 このように、ESG課題への取り組みは、会社自体にもメリットをもたらし得るといえる。

ESGの課題にどう対応するか

 ここまで述べてきたように、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードは共に、サステナビリティー課題への取組みの促進を期待している。

 コーポレートガバナンス・コード序文8項においても、両コードはいわば「車の両輪」であるとしており、両コードが適切に相まって実効的なコーポレートガバナンスが実現されることが期待されている。ESG課題への対応には投資家と会社双方の取組みが求められているのだ。

 しかし現状、ESG課題への対応には乗り越えるべき問題がある。
 その一つがESGギャップである。

ESGギャップとはなにか

 ESGの問題として、会社サイドでは統合的な報告が難しいという状況があり、投資家サイドでは財務情報へ関心がいきがちになる状況があるために、会社と投資家の間でESGに関するコミュニケーションが十分に行われていないとの指摘がある。

 この問題をESGギャップという。つまり会社と投資家のESGに関するコミュニケーションギャップのことである。

 会社サイドの問題として、統合的な報告が難しい状況にある理由は、財務情報を提供するIR担当者、ガバナンス情報を提供するSR担当者、ステークホルダーに対応するCSR担当者の間で情報連携ができていないことにある。IR担当者とSR担当者が共に投資家との対話に臨むという先端的な会社もあるが、全般的にはこうした課題が残っているとされる。

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