スチュワードシップ責任と非財務情報

 機関投資家はスチュワードシップ責任を果たす必要がある。
 スチュワードシップ責任とは、機関投資家が、投資先会社等への深い理解に基づいた「目的を持った対話」をすることを通じて会社の持続的成長を促すことにより、受益者等のリターンを中長期的に拡大させるべき責任のことをいう。

 スチュワードシップ・コードの原則3は、会社の状況を的確に把握することを機関投資家に求めている。投資先会社と対話する前に、会社の状況を良く調べることで洞察のある質問ができ、また対話の内容を深めることができるとの趣旨からである。

 では、長期の視点から会社の状況を把握するために重要となるのはどのような情報であろうか。

 短期の視点での投資では、たとえば四半期決算が上ぶれするか下ぶれするかという決算情報などの財務情報だけが重要となる。しかし、長期視点での投資では、財務情報だけではなく、新たに長期的な成長性(持続的成長)を見極めることができる情報が必要となる。この情報として大きな意義を持つものこそがESG情報なのである。

 ESG情報とは、将来業績予測に資する情報であり、企業価値創造プロセス、ビジネスの機会・リスクなどを会社が投資家に伝えるための情報群である。長期投資家は、会社からこのESG情報を受け取ることでその将来業績予想(シナリオ)をイメージすることができる。

 機関投資家には、このESG情報の取得・分析によって会社の状況を把握した上で、スチュワードシップ責任を果たすことが期待されているのである。

スチュワードシップ責任と受託者責任

 また、ESG投資は、機関投資家の受託者責任、すなわち受益者から委託された資金を責任をもって運用すべき義務を果たすことにも貢献し得る。

 ESG評価の高い会社とは、投資家との十分な対話の実現(G)、従業員との関係向上や安心な労働環境の構築(S)および環境規制への適切な対応(E)といったESG課題に適切に対応する会社であり、そうした会社は長期的な持続的成長力があると判断され、株価においても、長期的に良好なものとなると分析される。

 大和総研は、独立取締役が1人存在する企業、2人存在する企業、3人以上存在する企業にそれぞれ投資した場合のリターンの動向を調査した結果を開示している。これによれば、2012年以降の3年間、配当込みTOPIXの年率リターンは27.2%であったのに対し、独立取締役が3人以上の企業のリターンは30.3%であった。独立取締役を積極的に選任する会社は市場から評価されていると一応、言えそうである。

 機関投資家が投資先会社等のESG課題につき「目的を持った対話」により改善することは、スチュワードシップ責任だけでなく、受託者責任をも果たすことにもなり得るのだ。

 機関投資家には、ESG投資の有用性を見直し、持続的な成長力のある会社を見極めること、そしてより持続的成長力のある会社になるよう運用においてサポートすることが期待される。

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