政府の成長戦略である「日本再興戦略2016―第4次産業革命に向けて―」においても、監査法人のガバナンス・コードの策定に言及している。それを受け、2016年7月、金融庁に「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」(以下「有識者検討会」という。)が設置され、監査法人のガバナンス・コードの策定に向けた議論がなされており、年内をめどに取りまとめられる予定である。

監査法人のガバナンス・コードの内容・論点

 日本再興戦略2016や、金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会」によると、監査法人のガバナンス・コードの具体的な内容として、職業的懐疑心の発揮を促すための監査法人の経営陣によるリーダーシップの発揮や、運営・監督態勢の構築とその明確化、人材啓発、人事配置・評価の実施などについて規定することが考えられている。

 有識者検討会では、以下の4つの論点について議論がなされている。

論点 内容
目的 適正な会計監査の確保など
執行及びガバナンス機関 実効的な執行機関の確立、監査法人の運営に対する外部の第三者の関与など(執行機関の設置は法律上求められていない)
業務運営 人材育成等の方針、ステークホルダーとの対話など
説明責任 監査法人の業務・マネジメントに関する情報の開示など

 目的については、まず、①適正な会計監査の確保、②監査人による適正な職業的懐疑心の発揮、高い職業倫理・独立性の保持による会計監査の品質・信頼性の確保が挙げられている。これらの目的は法令等に定められている内容であり、監査法人が当然守るべき前提としての目的であるという指摘がされている。

 ほかにも、監査の品質を高めるために監査法人としてすべきこととして、③開放的な文化の保持(内外における十分なコミュニケーション)、④リーダーシップの発揮などの目的も挙げられている。

 監査法人のガバナンス・コードを策定するに当たっては、有識者検討会のメンバーも指摘しているように、コードという外形をつくるだけでなく、実際に活用していくことが重要である。前述した監査に関するコーポレートガバナンス・コードと連携して、適正な監査の確保が実現されることが求められている。

 企業の不祥事防止という「守りのガバナンス」は、コーポレートガバナンス・コードが策定されるよりも前から改革がなされていた。最近は、コーポレートガバナンス・コードの策定により「攻めのガバナンス」が注目を浴びている。しかし、健全な企業経営を行うための「守りのガバナンス」の重要性は今も変わらない。むしろ、「守りのガバナンス」の仕組みは、「攻めのガバナンス」に対するブレーキ役として、ますます重要となるはずである。「守りのガバナンス」と「攻めのガバナンス」は会社にとって車の両輪であって、どちらかを欠くことはあり得ないのだ。

 監査法人には、「守りのガバナンス」の担い手としてその役割を果たしていくことが期待されている。監査法人のガバナンス・コードの策定が予定されているが、どんなにすばらしいコードが策定され、それに沿って組織が構築されたとしても、実際に機能しなければ意味がない。

 組織を機能させるためには、社外の有識者のみならず内部の社員全体の意欲と能力が重要なのである。そのなかでも最も重要なのは会社の場合と同様、トップである。トップが社員を指揮することが必要なのであり、場合によってトップ自身の意識改革も求められるだろう。果たして監査法人のガバナンス・コードにより監査の品質は向上していくのだろうか。今後に期待したい。

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