他方、このベストプラクティス・モデルに対しては、ひな型になりかねないという批判的な見方があることに留意が必要である。ひな型に拠っていると言われてしまってはガバナンス・ガイドラインの目的に反する結果になりかねない。その意味では、ベストプラクティス・モデルは一応の参考にはなるが、ひな型として形式的に採用するのではなく、各社の実情に応じて個別具体的に検討してガバナンス・ガイドラインを策定することこそがガバナンス・ガイドラインとしての勘どころといってよいであろう。

コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方

 まず、総則として、ガバナンス・コード原則3-1(ⅱ)が開示を求めている「コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方」を記載することが考えられる。この「基本的な考え方」は以前からコーポレートガバナンスに関する報告書の開示事項となっている。

 例えば、ファナックは、「コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方」として、企業理念の「厳密と透明」の実践を徹底していることを「コーポレートガバナンス・ガイドライン」に記載している。これについては、「会社の針路がはっきりわかる」としてファナックの姿勢を評価する運用会社がある。

ガバナンス・コードには規定されていない事項

 取締役会議長に関する記載

 ガバナンス・コードは、取締役会議長については規定していない。ガバナンス・コード原則4-6は、経営の監督の実効性を確保すべく、「業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用」を求めており、経営の監督と執行を分離させることが推奨されているにとどまる。

 そこで、経営の監督と執行の分離をさらに徹底させるために、取締役会議長を代表権のない非業務執行取締役とすることが考えられる。英国のガバナンス・コードには、取締役会議長と最高経営責任者の役割は同一人物が果たすべきでないと規定されている。

 取締役会議長についてガバナンス・ガイドラインに記載している会社として、例えばエーザイが、「取締役会の議長と代表取締役CEOとを分離する」ことや、「議長は、社外取締役の中から選定する」ことを定めている。

 独立社外役員の独立性判断基準などに関する記載

 ガバナンス・コードでは独立社外取締役の独立性判断基準を策定・開示することが求められている(原則4-9)。しかし、独立社外役員の任期(通算在任期間)に関する規定はない。この点については、長い間会社にいるほど独立役員に求められる客観的な判断が困難となり、独立性に疑義が生じるおそれがあるとの考えがあることや、反対に監督の実効性のためには任期が長いほうが望ましいといった考えもあることも踏まえ、双方のバランスを考慮して総合的立場から各社の事情にしたがって検討することが望ましい。

 ガバナンス・ガイドラインに独立社外役員の任期についての記載をしている会社として、例えば、みずほフィナンシャルグループがある。同社は「全社外取締役の平均通算在任期間は、原則として、6年を超えないこととし、定期的かつ継続的に社外取締役の交替を行う」ことを定めている。また、野村ホールディングスでは、「社外取締役の在任期間については6年を目途として、その再任の是非を判断する」としている。

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