株主や投資家との対話の促進

 ガバナンス・ガイドラインに、ガバナンスに関する情報がまとめて記載されていると分かれば、株主や投資家も先ずはガバナンス・ガイドラインに注目するであろう。ガバナンス・コードに規定されていない事項を含め幅広くガバナンス・ガイドラインに記載し、ガバナンス全体に対する会社の姿勢を一元的に示すことは、株主や投資家にとっても会社のガバナンスについての理解が容易になるというメリットがある。

 また、前述したとおり、そもそもガバナンス・ガイドラインは米国を中心に海外では定着している制度である。そのため、海外の株主や投資家はガバナンス・ガイドラインを読んで会社との対話や投資を行うことに慣れているといえる。したがって、ガバナンス・ガイドラインについて英訳を公表すれば、会社のガバナンスについて海外の株主や投資家からより深く理解してもらうことができるであろう。

 このように、ガバナンス・ガイドラインを策定・公表し、株主や投資家の理解を高めることで、会社と株主や投資家との対話を促進させることが期待できる。株主や投資家がガバナンス・ガイドラインを見た上で会社に対話を求めるようになれば、対話の際にはガバナンス・ガイドラインに記載されたトピックについて深い議論がなされることが期待できるのだ。

ガバナンス・ガイドラインの体裁

 ガバナンス・ガイドラインの記載事項は決まっていないが、いくつかのパターンが見受けられる。

 まず、重要事項に絞ったシンプルなパターンがある。例えば、三井住友トラスト・グループの「コーポレートガバナンス基本方針」は、全部で15条と項目が比較的少なく、重要事項に絞っているように見られる。他方で、全部で47条の項目がある大和ハウス工業の「コーポレートガバナンスガイドライン」のように、様々な項目について詳細に規定するパターンもある。

 さらに、本文とは別に参考として資料を付けるパターンもある。例えば、三井住友フィナンシャルグループの「SMFGコーポレートガバナンス・ガイドライン」には、経営理念、行動規範、役員候補者選定基準、社外役員の独立性に関する基準などを参考として記載している。他にも、オムロンの「コーポレート・ガバナンス ポリシー」など株主との対話に関する方針を資料として付している会社もある。

 また、ガバナンス・コードとの関係についてもいくつかのパターンがある。例えば、大和ハウス工業やアサヒグループホールディングスのように、ガバナンス・ガイドラインの項目ごとにガバナンス・コードの対応する番号を記載して対応関係を示す会社がある。このガバナンス・コードの番号を併記する方法は、投資家からも「便利だ」と評価されているようだ。さらに、スタートトゥデイのように、ガバナンス・コードそのものを併記して、ガバナンス・コードの順番に沿って取り組みの状況を記載している会社もある。他方、ガバナンス・コードにとらわれない構成をとる会社も多く見受けられる。

具体的な記載項目

 日本取締役協会が、2015年4月に、ガバナンス・コード原則3-1(ⅱ)の「コーポレートガバナンスに関する基本方針」のベストプラクティス・モデルを策定・公表している。

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 章立てはガバナンス・コードに沿ったものとなっているが、取締役会議長などガバナンス・コードでは規定されていない事項も含め詳細に規定している。

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