現状において日本の上場会社の大半を占め重要な役割を果たしている監査役設置会社や新たに設けられた監査等委員会設置会社には法定の報酬委員会が存在しない。コーポレートガバナンス・コード補充原則4-10①は、こうした会社について独立社外取締役を主要な構成員とする任意の報酬諮問委員会を設け、独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきであるとしている。これらの会社では、任意の委員会を通じて役員報酬の審議過程に独立社外取締役を積極的に関与させ、自社の役員報酬戦略についての実質的で充実した審議を行うことがますます重要となるだろう。

 既に、任意の報酬委員会が有益であることを実感したという企業が出ている。独立社外取締役を中心とする任意の報酬諮問委員会において役員報酬の検討を行ったことにより、株主の目線から見て適切とされるROEなどの業績連動指標を用いた報酬制度を構築することができたとされる例や、単年度の業績と連動していた役員報酬を中期経営計画と連動させて複数年度の業績にコミットさせる報酬を構築することができた例などである。

 例えば花王では、社内取締役3人(取締役会会長、前代表取締役)、社外取締役3人、社外監査役3人の合計9人からなる取締役・執行役員報酬諮問委員会を設置し、「永続的な企業価値の増大」や「株主との利害の共有」などの経営目標を踏まえた役員報酬制度や報酬水準の審査を実施している。監査役を構成員としていることを含め、監査役設置会社における任意の報酬諮問委員会のあるべき姿として大いに参考になろう。

 なお、2015年7月14日時点の東証における監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社全3410社のうち、報酬委員会に相当する機能を持つ委員会を任意に設置している会社は219社(6.4%)にとどまっていたが、2016年8月19日時点には588社(16.7%)に増えており、さらに増加していくことが予想される。

役員報酬は高額化するか

 以上のようなインセンティブ報酬に関する改革を受け、今後は、会社においてインセンティブ報酬の導入が進むことが予想される。

 最後に、このような動きと日本企業の役員報酬の高額化の関係について述べたい。

 日本企業はこれまで「お手盛り」であるとの批判への懸念から、役員報酬の高額化には消極的になる傾向があった。社内取締役だけでは、自身の報酬を高額化することに躊躇する雰囲気があったということだ。

 しかし、経営陣から独立した客観的な立場にある社外取締役が報酬決定において果たす役割が大きくなれば、役員の報酬は高額化していくだろう。業績向上のために社外取締役の役割に期待する以上、「お手盛り」という批判は当たらない。既に一部の企業においては、社外取締役から、会社業績に比べて役員の報酬額が低いため、もう少し報酬を増やしてもよいのではないかとの指摘がされている。

 役員報酬における中長期業績連動報酬の割合を増加させることにより、役員が株主と利害を共有する体制を構築した結果として企業価値が向上することとなれば、役員としても胸を張って高額の報酬を受け取ることが可能となるだろう。