アステラス製薬における役員報酬BIP信託制度は、事業年度ごとに1個の信託が設定され、最大3個の信託を並列させることが可能である。また、各信託期間の満了後も次の信託契約の継続が予定されている。したがって、経営陣は、事業年度ごとに、信託対象期間である3年先の業績を常に意識した経営を行うことが意識付けられ、おのずから中長期的な業績を意識した経営が行われることが期待されている。

役員報酬の方針に関する開示のあり方

 コーポレートガバナンス・コードは、上場会社に対し、「経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続」を作成・開示し、主体的な情報発信を行うよう求めている。そのため上場会社は、自社の経営目標・経営戦略を踏まえた役員報酬制度の目的と方針を明確化することが必要となる(コーポレートガバナンス・コード原則3-1(iii))。

 「日本企業の経営者は米国並みの高額報酬に?」でも述べたように、現在の法令上の制度(企業内容等の開示に関する内閣府令)では、会社は、役員の報酬等の額、またはその算定方法に関する方針を定めている場合には、方針の内容と決定方法を記載することが求められているのみで、これらを定めることまでは求められていない。

 しかしながら、コーポレートガバナンス・コード原則3-1(iii)においては、報酬にかかる方針や手続を策定していない場合には、これらを策定した上で開示することまでが求められているのである。

 コーポレートガバナンス・コード補充原則3-1①は、会社が報酬決定の方針や手続を開示する際に、記載内容がひな形的な記述や具体性を欠く記述とならないよう、利用者、すなわち投資家などにとって付加価値の高いものとなるように配慮することを求めている。したがって、各会社の報酬決定の方針を開示する場合には、当該報酬制度によって達成すべき目的や狙いを概括的に開示するだけでは不十分であり、そのような目的や狙いを達成するために具体的にどのような報酬制度を採用しているのかなど、報酬の構成などの中身も併せて開示することが求められる。

 この点、参考になるのがリクルートホールディングスの例だ。同社のコーポレートガバナンスに関する報告書では、「役員報酬の基本方針」として、以下の4点を示した上で、「報酬構成」において「『固定報酬』を基準として、『短期インセンティブプラン』は、固定報酬の50%程度、『長期インセンティブプラン』は固定報酬の50%~200%程度」とする旨の報酬構成を具体的に開示している。

【リクルートホールディングスの掲げる「役員報酬の基本方針」】
 ア グローバルに優秀な経営人材を確保できる報酬水準とする
 イ 役員を目標達成に動機づける、業績連動性の高い報酬制度とする
 ウ 中長期の企業価値と連動する報酬とする
 エ 報酬の決定プロセスは、客観的で透明性の高いものとする

(リクルートホールディングス「コーポレートガバナンス報告書」
2016年6月22日より抜粋)

任意の報酬委員会等の独立社外取締役の活用

 既に述べたとおり、会社がどのような報酬制度を構築するかは、各社の経営目標・経営戦略によって異なる。したがって、経営者のインセンティブ創出に実効性のある報酬制度を構築するためには、経営目標・経営戦略と密接に関連させた案を作成したうえで、独立社外取締役を含めた取締役会で充実した議論をすることが不可欠だ。