柔軟な機関設計
 他方、監査等委員会設置会社においては、一定の重要な業務執行の決定を取締役に委任せずに、取締役会が業務執行の決定を行うマネジメント型とすることもできる。自社の取締役会がマネジメント型、モニタリング型のいずれが適しているのかを考え、柔軟に機関設計をすることができるのだ。

社外監査役に加えて社外取締役を選任する負担の回避
 監査役会設置会社を含め、上場会社においては、社外取締役を複数選任する必要がある。コーポレートガバナンス・コード(以下「ガバナンス・コード」という。)が、複数名の独立社外取締役を選任することを要求しているためである(原則4-8)。加えて、議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)も、2016年2月から株主総会後の取締役会に最低2名の社外取締役がいない場合、経営トップである取締役の選任議案に原則として反対することを推奨するという新基準を採用した。

 監査役会設置会社では、会社法上2人以上の社外監査役の選任が義務付けられているため、さらに社外取締役を選任することは、重複感・負担感があるとの指摘がなされている。他方、監査等委員会設置会社には監査役がいないことから、監査等委員会設置会社へ移行すれば、最低2人の社外取締役を選任すればよいので、重複感・負担感は解消されることになるだろう。

海外機関投資家からの理解を得やすい
 監査役に議決権が与えられていない日本特有の監査役制度は、海外機関投資家にとって馴染みがないため、理解が難しいと言われている。他方、監査等委員は議決権を有するため、監査等委員会設置会社という形態は海外機関投資家がイメージしやすい会社形態と言われている。特に海外機関投資家に強い影響力を持つISSは、監査等委員会設置会社に移行する定款変更議案に原則賛成を推奨する議決権行使助言方針を採用している。そのため、海外機関投資家による投資の拡大も期待できると言われる。

 もっとも、以下に述べるように、海外機関投資家が監査等委員会設置会社への移行について反対したり、ISSが監査等委員会設置会社に移行する定款変更議案について賛成に条件を付けることを検討したりするなど、2016年に入って監査等委員会設置会社をめぐる状況は変化してきていることには注意が必要である。

オプトホールディングの監査等委員会設置会社移行への反対

 2016年3月、シカゴを拠点とする米国の資産運用会社RMBキャピタル(2005年に創業され、約5000億円の運用資産を保有)は、オプトホールディング(RMBキャピタルが5%超の株式を保有する)の監査等委員会設置会社への移行に反対した。オプトホールディングの株主総会において、監査等委員会設置会社へ移行する旨の定款変更議案は可決されたものの、RMBキャピタルは委任状勧誘を行い、約2割の反対票が集まっていた。議決権を行使したオプトホールディングの少数株主のうち、約5割が反対票を投じた結果が約2割となったという。RMBキャピタルは、監査等委員会設置会社への移行ではなく監査役設置会社のままで任意の指名・報酬委員会を設置する方法などを提案したのである。

 RMBキャピタルのリリースによると、監査等委員会設置会社への移行に反対を表明した主な理由は、以下の4点である。

指名・報酬委員会の不存在
 監査等委員会設置会社に移行しても、指名・報酬委員会を設置しなければ、経営陣が少数株主の利益を保護するように努めることの動機が不十分となる。