象徴的な変更点は、監査役設置会社において、総会後の取締役会に最低2人の社外取締役がいない場合、経営トップである取締役に反対を推奨するというものである。2015年は、「社外取締役が1人もいない場合」に反対を推奨するとしていた。ガバナンス・コードで「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである」(原則4-8)と規定されたことを踏まえたものである。ただし、ISSは、親会社や支配株主を持つ会社を除き、社外取締役が独立であることまでは要求していない。

 仮に議決権行使助言会社の反対推奨を受けて、株主が議案に反対の意向を示したとしても、株主との対話を通じて議案についての理解を得ることは十分可能である。

 ガバナンス・コードの普及・定着状況をフォローアップし、上場会社全体のガバナンスを向上させること目的に金融庁に設置されたフォローアップ会議でも、「議決権行使助言会社は、形式的な企業の対応を助長する結果につながらないよう、実質的な判断を行うよう努めるべき」であり、「機関投資家も、議決権行使助言会社の助言に形式的に依拠するのではなく、……自ら実質的な判断を行う必要」があると指摘しており、傾聴すべきである。

機関投資家等による総会出席への対応

 補充原則1-2⑤は、信託銀行等を通じて株式を保有する機関投資家(実質株主)が株主総会への出席などを希望した場合の対応の検討を上場会社に求めている。

 多くの上場会社が定款で「代理人は株主に限る」旨を規定しており、株主名簿上は株主ではない実質株主の総会出席・議決権行使が可能かどうかはこれまで不明確であった。

 2016年の株主総会では、2015年11月に、全国株懇連合会(株式実務担当者の集まりで、株式実務に関する調査・研究などを行う)が、「グローバルな機関投資家等の株主総会への出席に関するガイドライン」を策定しているため、同ガイドラインを参考に対応方針をあらかじめ検討しておく必要があろう。

株主総会の運営

 株主からの質問に対しては、想定問答の読み上げではなく、自らの言葉で正面から回答することが、「株主との建設的な対話の場」である株主総会におけるやり取りとして望ましいことは論を俟たない。

 経営について正面から問う株主からの質問には、取締役も、自らの信念にもとづき、自らの言葉で、自社の経営状況を株主に説明するべきなのである。

 株主総会でより踏み込んだ議論を行うための工夫として、例えばエーザイでは、以下のような想定問答を株主総会招集通知に掲載している。

Q 社外取締役はどんな活動をしていますか?
A 取締役会では、法令、定款および取締役会規則で定められた決議事項(執行役の選任、中長期経営計画の基本方針、年度事業計画、四半期ごとの決算など)の審議および決定を行うとともに、執行役の業務執行状況について随時報告を受けています。これらに対して社外取締役は、それぞれの専門性や株主様の視点にもとづいて適切な意見を適宜述べ、経営の監督機能を十分に果たしています。

 この結果、株主総会当日は、上記のような想定問答を踏まえ、さらに踏み込んだ内容について会社と株主とのやり取りが行われることが期待できよう。

 ガバナンス・コードはプリンシプルベース・アプローチを採用しているため、ガバナンス・コードを踏まえた株主総会の準備・運営は会社ごとに異なるはずであるし、むしろ各社の特性に応じた多様な株主総会が実施されることこそが望ましい。経営は各社各様だからである。それこそが中長期的な企業価値の向上と持続的な成長につながる道であろう。