ROEは、機関投資家が投資先企業との対話において重視する項目であるうえ、上記のようにガバナンス・コードや伊藤レポートにおいてROEを重視する傾向が強まっていることが影響して、ROEについての質問が増えているものと考えられる。

 また、以下のようなコーポレートガバナンスに関する質問も増加している。

【質問例】

  • コーポレートガバナンス・コードは独立社外取締役を少なくとも2名以上選任することを求めているが、当社はどのような方針か。
  • 当社は監査役設置会社であるが、会社法改正により新設された監査等委員会設置会社への移行は検討していないのか。

 コーポレートガバナンスに関する質問数の増加は、会社法改正やガバナンス・コード策定をきっかけにガバナンス体制に対する社会的関心が高まったことを背景として、株主においてもいっそうの関心を抱くようになったといえよう。

2016年株主総会へ向けて

 上場会社としては、平時からの対話に努め、株主総会はその対話の重要な一環、すなわちキーストーンとして理解するべきであろう。ガバナンス・コードも、「株主総会以外の場においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである」(基本原則5)と規定している。

 株主との対話の窓口としては、社外取締役の活躍が期待されていることに注意すべきである。ガバナンス・コードは、株主総会の場以外での株主との対話に努めるべき者や、株主と面談をする者の例として、社外取締役を明記している(原則5、補充原則5-1①)のだ。

 社内のしがらみに捕らわれずに行動することができる社外取締役なかでも独立社外取締役は、株主を初めとする全てのステークホルダーの代表として、経営陣と株主との間の橋渡しをする役割が求められているからである。

 カプコンは、社外取締役と機関投資家との間でミーティングを開催していたとのことである。このように、社外取締役による平時からの対話を実践している会社も既に存在しているのである。

 株主総会での対話は、招集通知などの情報に基づいて行われることになるが、それだけでは情報が限られてしまう。平時から株主との対話を行うことでより多くの情報を共有することができれば、株主総会での対話の活性化につながるのであり、会社の方針を理解したうえでの株主の議決権行使にもつながるのである。

ガバナンス報告書を意識した準備

 既に述べたとおり、多くの会社において今年の株主総会は、ガバナンス・コードに対応したガバナンス報告書を提出してから初めての株主総会となる。

 株主がガバナンス報告書を読んだ上で株主総会に出席することが想定される。そのため、株主からは、ガバナンス報告書を意識した以下のような質問がなされることが予想される。

【質問例】

  • 報告書で開示した後のコーポレートガバナンス・コードへの取組み状況について説明してほしい。
  • 当社のガバナンス報告書では、取締役会の実効性評価を実施しておらず、今後実施・開示予定とされているが、実施したのであれば結果を教えてほしい。
  • 最近では任意の指名委員会や報酬委員会を設置する例が増えているようであるが、当社は設置する予定はないか。

 また、ガバナンス報告書で、ガバナンス・コードの原則を実施せず、その理由をエクスプレインしているものの中には、対応について「検討中」としているものが多い(全エクスプレインのうちの約45%、2015年12月時点)。

 そのような開示をした上場会社においては、検討結果について株主総会で質問されることが予想されるため、あらかじめ対応について検討した上で株主総会に臨む必要がある。

議決権行使助言会社の最新動向

 株主、特に海外の機関投資家の意向を踏まえた準備を行うには、議決権行使助言会社の助言基準を参照することが有用である。外国株主による持株比率が高い上場会社にとっては必須と言える。最大手の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、2016年も、クックパッドの株主総会において、会社提案に係る取締役再任案に反対を推奨し、話題となった。

 ISSは、今年もコーポレートガバナンスに関して厳格化・明確化する方向で助言基準を変更した。