経営者と株主の間の利益相反を回避するためには、社外取締役だけでは不十分なときには、積極的に第三者委員会を活用すべきであろう。米国では、独立取締役で構成される特別委員会が設置され、特別委員会がMBOの交渉などを行うことが定着している。日本でも、MBO指針が第三者委員会への諮問を提言したことなどを受けて、MBOにおいて第三者委員会の設置が一般的となっている。東証は、MBOの対象会社がMBOに関して意見表明を行う際、利益相反回避措置の開示を求めており、MBO指針と同様に、利益相反回避措置の例として、社外取締役の関与や、特別委員会の設置、特別委員会への諮問・交渉の委嘱を挙げている。

 コーポレートガバナンス・コードの導入以前は、社外取締役の数が少なかったこともあり、社外取締役が第三者委員会の委員となった例は多くはなかった。しかし、コーポレートガバナンス・コードの導入により独立社外取締役が増加したことで、今後は、会社によっては社外取締役が第三者委員会の中心となることも予想される。第三者委員会の委員には、会社の業務に関与していない外部の専門家よりも、ある程度会社の業務を把握している社外取締役の方が望ましい面があることから、独立社外取締役が第三者委員会の委員となり委員会を主導することが期待されると言える。

 また、第三者委員会では法律や会計の知識が必要となることから、法律や会計を専門とする社外取締役を委員とすれば、その専門性を生かすことも期待できるだろう。

取締役の責任が問題となった例

レックスHD事件とレブロン義務

 レックスHDの損害賠償請求事件では、取締役はMBOに際し、善管注意義務の一環として、適正な企業価値の分配を受ける株主の共同の利益に配慮して、公正な企業価値の移転を図らなければならない義務(以下「公正価値移転義務」という)を負うとされた。MBOにより生じる利益を株主にも与えなければいけないということである。企業価値を適正に反映しない買収価格により株主間の公正な企業価値の移転が損なわれたときは、善管注意義務違反が認められる余地があるのだ。ここでも、MBO指針に即してMBOを実施することが重要であるということだ。

 米国では、MBOの場面において、株主にとって合理的に入手可能な最善の取引を実現するために、取締役に対して十分に情報を得て合理的に行動することを要求する義務がレブロン義務という名称で確立されている。すなわち、レブロン義務とは、会社を売却する場面等において株主の利益を保護するため、取締役に対して合理的な手続を経ることを求める義務である。

 このレブロン義務は、株主の利益への配慮を求めるものと考えられ、立証責任やフェアネス・オピニオンの評価の違いなどを除けば、レックスHD事件で認められた公正価値移転義務と著しく乖離するものではないと言われている。

 なお、レックスHD事件では価格最大化義務(会社の売却価格を最大限に高める注意義務)も問題となったが、レブロン義務は価格のみを考慮するのではなく、交渉過程を重視する。日本の裁判所は、明確にはレブロン義務を認めておらず、価格最大化義務とレブロン義務を異なるものとして捉えている可能性もあり、株主の利益保護を目的とするレブロン義務の考え方は日本のMBOにおいても参考にすべきであろう。