これはMBOにも当てはまる意見である。この補足意見は、裁判所が手続の公正を適格に認定する点で特に重要な機能を果たすものとしており、今後は、取得価格という取引条件を決めることについて手続が公正と認められるか否かが、これまで以上に中心的な問題となると予想される。たとえば、第三者委員会による利益相反の回避など公正を担保するための十分な措置といった手続を講じることが必要となり、また、特段の事情の無い限り、それで十分とされると思われる。

少数株主に配慮するためのMBOにおける実務

 MBOを行う際には、経済産業省が2007年9月に公表した「企業価値の向上および公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(以下「MBO指針」という)が重要となる。MBO指針に沿った実務が定着しており、裁判所も、取締役が善管注意義務に違反していないかを判断する際にMBO指針を考慮している。

 MBO指針は、MBOを行う上での尊重すべき2つの原則として、企業価値の向上(第1原則)と公正な手続を通じた株主利益への配慮(第2原則)を掲げている。

 また、この2つの原則を実現するという観点から、透明性・合理性確保のための枠組みとして、①株主の適切な判断機会の確保、②意思決定過程における恣意性の排除、③価格の適正性を担保する客観的状況の確保を求めている。

 さらに上記のとおり、2015年6月に導入されたコーポレートガバナンス・コード(原則1-6)は、MBOについて、「支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策」であって「株主の利益を害する可能性のある資本政策」であるとした上で、取締役会・監査役に対し、株主を不当に害することのないよう、適正な手続を確保し、株主に十分な説明を行うことを求めている。

 例えば、スタートトゥデイは、「コーポレートガバナンス・コードに関する当社の取り組みについて」において、このコーポレートガバナンス・コードを踏まえつつ、以下のようにコーポレートガバナンス・コードでは明示されていない独立社外役員の関与についてまで言及しており、手続への配慮として参考となる。

支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策を行う際には、独立社外役員の意見を配慮しつつ、その検討過程や実施の目的等の情報を速やかに開示するとともに、決算説明会や株主総会の場を活用して十分な説明に努めます。

MBO時の社外取締役の役割

 MBOにおいて、社外取締役は、株主利益への配慮等についてモニタリングする役割を果たすことが期待されている。上記のMBOの問題点(①経営者と株主の間の利益相反、②情報の非対称性、③強圧性)を常に意識し、問題に対処していくことが求められる。特に、前述したジュピターテレコムの事件を踏まえて公正な手続を確保することが重要となろう。

 日本弁護士連合会の「社外取締役ガイドライン」によると、社外取締役は、MBOについて、以下の点に留意すべきとされる。

 まず、MBOの背景事情を踏まえた目的の合理性である。経営者がMBOにより自己の利益を図るのではなく、企業価値を向上させることが目的であることをモニタリングする必要がある。また、買付価格の相当性とその決定プロセスの公正性及び透明性を確保することも求められる。前述のとおり、経営者と株主には情報の非対称性という問題があることを踏まえると、株主が公開買付けに応じるか否かについて適切な判断ができるようにするには、株主に対し、十分な情報開示を行わなくてはならない。公開買付けに関するQ&Aという書面を任意に開示して、株主に分かりやすく説明する例もある。さらに、意思決定過程における会社側の恣意性を排除するため、利益相反関係にある取締役の範囲及び関与(遮断)の程度にも留意する必要がある。