MBOによる非上場化は、最近10年間で100件以上にのぼっている。その数は一時減少していたが、低金利のため資金調達がしやすいということもあり、今後、MBOが活発になることが予想されている。

 しかしながら、非上場化してから再上場を果たしたのは、これまでのところ、すかいらーくなど6件にとどまっている。すかいらーくは2006年9月、収益が悪化している状況から、短期的なリターンを求める株主の圧力を避け、経営計画を修正するため、MBOを実施して上場廃止となった後、収益力の回復などを踏まえ、2014年10月、再上場に成功している。

MBOの問題点と留意点

 MBOについては3つの問題点が指摘されている。
 まず、経営者と株主の間の利益相反である。公開買付けにより株式を買い取る際、買主である経営者は安く買うインセンティブがあるのに対して、売主である株主は高く売るインセンティブがあるという構造的な利益相反関係がある。

 また、情報の非対称性という問題も経営者と株主の間にはある。経営者は公開されていない会社の内部情報を把握しており、その情報をも前提にして株式の買取価格を決めることができる。他方、株主は公開された情報しか知ることができない。自分の持っている株式の隠れた価値を誤解したまま経営陣へ株式を売却してしまうおそれがあるということである。

 さらに、強圧性という株主への心理的圧力の問題がある。株主は公開買付けに応じなかった場合、公開買付けの後で公開買付価格よりも安い価格で株式を強制的に買い取られるおそれがあるということである。その心理的な圧力から、公開買付価格に不満があっても公開買付けに応じてしまうしかないと考えがちなのである。

 MBOを適切に行うためには、これらの問題点を踏まえ、株主の正当な利益に配慮することが求められる。アデランスのMBOでも、公開買付価格が低過ぎるとして一部の株主が不満を抱いた。

 MBOにおける株式の取得価格は裁判で争われることがしばしばあり、会社の決定した価格よりも高い価格で買い取るべきとした裁判例もある。会社法上、会社による株式の取得価格に不満がある株主は、裁判所に対して取得価格の決定を申し立てることができる。例えば、2008年9月12日付のレックス・ホールディングス(以下「レックスHD」という)の株式取得価格決定申立事件で、東京高等裁判所は、会社の決定した価格である1株23万円よりも46.5%高い1株33万6966円を株式の取得価格とした(2009年5月29日に最高裁で抗告が棄却されて確定)。

 他方、MBOではないが、公開買付け後に、公開買付けに応じなかった株主の株式を強制的に取得した事案がある。ジュピターテレコムの株式取得価格決定申立事件である。最高裁は、2016年7月1日、取得価格を公開買付価格と同額とするのが相当という判断を下している。

 この事件で最高裁は、一般に公正と認められる手続により公開買付けが行われ、その後に公開買付価格と同額で残りの株を取得した場合には、特段の事情がない限り、取得価格を公開買付価格と同額とするのが相当とした。

 裁判官の補足意見には注目すべき見解が示されている。構造的な利益相反関係が存する場合についても、一般に公正と認められる手続が実質的に行われ、公開買付価格が公正に定められたものと認められる場合には、裁判所は、原則としてこのような手続を通じて定められた価格を尊重すべしというのである。