評価は賛否両論

 トヨタのAA型種類株式の特徴は、以下のようにまとめることができる。

 1つ目の特徴として、中長期保有志向の株主層を形成するために、AA型種類株式は、その譲渡が「制限」されていることが挙げられる(上記③)。[注]


[注]ただし、譲渡が絶対的に「禁止」されているわけではなく、トヨタの取締役会の承認(会社法139条)がある場合などには、株主は譲渡可能である。また、相続が生じた場合にも、AA型種類株式は取締役会の承認がなくとも相続人に承継される。トヨタが譲渡を承認しないときは、トヨタ自身またはトヨタの指定する者がAA型種類株式を買い取るよう請求することもできる(会社法138条1号ハ、同条2号ハ)。

 2つ目の特徴として、AA型種類株式については、中長期的保有を促すインセンティブが用意されていることが挙げられる。

 AA型種類株式については、概ね5年の経過によってはじめて行使できる請求権(普通株式への転換または発行価格への換金)による実質的な元本保証がつけられている(上記⑤)。また、5年間にわたり、配当年率を段階的に引き上げる設計とされている(上記④)。

 3つ目の特徴として、AA型種類株式には、中長期的な企業価値の向上に主たる関心を持つ株主が経営に影響力を及ぼせるように、普通株式と同一内容の議決権も付与されていることがあげられる(上記②)。

 上場会社が、以上のような特徴を有する種類株式を発行することは前例がなく、その評価については賛否両論がある。

 消極的評価を述べる代表格が、議決権行使助言会社の最大手の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)だ。ISSは、AA型種類株式による安定株主の増加により、トヨタの経営陣に市場の規律が働きにくくなると評価した。

 一方で、積極的な評価もある。

 同じく議決権行使助言会社の大手である米グラスルイスは、AA型種類株式はトヨタの財務の柔軟性を高め、将来の事業機会の確保につながると評価した。

 また、経営破綻の危機に瀕したときには株式を売却することが事実上困難である以上、AA型種類株式の株主は、業績悪化局面で経営陣に対してより批判的な投票行動を取る可能性が高いとの指摘もある。

 私自身は、トヨタによるAA型種類株式の発行を積極的に評価している。

 譲渡が制限され、普通株式への転換や発行価格での換金も請求できない5年の間にトヨタの業績が極端に低迷すれば、AA型種類株式の株主は、議決権を活用し、機関投資家による抜本的な経営体制の変更要求に賛成する可能性が高いのではないか。

 むしろ、トヨタが今後5年間という中長期の成長にコミットし、その経営戦略について個人株主と積極的に対話を行っていこうという決意の表れとみることができる。

 なお、トヨタは、2015年6月の株主総会の約2カ月前に、AA型種類株式に関する議案の説明資料として、「ご説明資料」や「Q&A」を公表した。特に「Q&A」は株主により分かりやすく議案の内容を説明しようとするものである。このようなトヨタの積極的な姿勢は、コーポレートガバナンス・コードのもとでの株主総会における株主との建設的な対話を目指すものといえる。

株主に合理的に説明するロジックが必要

 AA型種類株式の議案に関する議決権行使の結果をみると、約24%の反対票が投じられた。また、株主総会の承認を得たものの、AA型種類株式を発行する利点が分かりにくいとの指摘などがあり、開催時間はトヨタの総会としては最長の3時間超となったとのことである。

 今後、トヨタにおいては、反対の理由などについての原因分析を行い、株主との対話をさらに積極的に行うことが考えられる(コーポレートガバナンス・コード補充原則1-1①)。

 また、他社において同種の種類株式の導入を検討する場合にも、発行の必要性などを株主などに対して合理的に説明できるロジックを十分に準備しておく必要があるだろう。

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