このようなショートターミズムは、中長期的な企業価値の向上を犠牲にして短期的利益を追求するものであり、企業が長期にわたり利益を生む能力を脅かすとして国際的に警戒されてきた。

 日本版のコーポレートガバナンス・コード及びスチュワードシップ・コード策定に影響を与えた英国版のコーポレートガバナンス・コードおよびスチュワードシップ・コードは、ショートターミズムを抑制することを大きな主眼として策定されたものである。

日本におけるコーポレートガバナンス改革の流れ

 ショートターミズムの抑制への国際的な関心を背景に進められてきた日本のコーポレートガバナンス改革では、以下のとおり、ショートターミズムへの警戒・配慮がうかがえるとともに、「中長期的」な企業価値の向上が重視されてきた。

 まず、2013年6月に公表された「日本再興戦略-Japan is Back-」では、機関投資家が、対話を通じて企業の「中長期的な成長」を促すことなどを内容とする日本版スチュワードシップ・コードを取りまとめることが提言された。

 この日本再興戦略での提言を受けて、日本版スチュワードシップ・コードが2014年2月に策定された。日本版スチュワードシップ・コードにおいては、機関投資家は、「目的を持った対話」などを通じて投資先企業の「企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、…中長期的な投資リターンの拡大を図るべき」(指針1-1)とされるなど、「企業の持続的成長」が強調されていることが1つの特徴である。

 2014年6月に公表された「『日本再興戦略』改訂2014」ではコーポレートガバナンス・コードの策定が提言され、2015年6月に同コードが施行された。

 そのコーポレートガバナンス・コードでも、中長期保有志向の株主が「市場の短期主義化が懸念される昨今においても、会社にとって重要なパートナーになりうる存在である」との認識のもと、コードが「中長期の投資を促す効果をもたらすことをも期待」するとされている(資料編・序文第8項)。また、企業の「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」という目的を共有できる投資家との間で、「建設的な対話」を行う(基本原則5)ことも規定されている。

 このように、上場会社の経営者には、ショートターミズムに陥ることなく、中長期的な企業価値の向上という目的を同じくする株主と対話を続け、企業価値の中長期的向上を目指すことが求められているのである。

トヨタのAA型種類株式とはどんなものか

 コーポレートガバナンス・コードの策定をはじめとする近年のコーポレートガバナンス改革において「中長期的」視点が重視されている以上、各企業はこれを意識せざるを得ない。このような状況のもと、各企業は、その「重要なパートナー」となる中長期保有志向の株主をどのように確保し、中長期的な企業価値の向上のための対話を行っていくべきか。

 企業側からの「回答」の好例が、トヨタが2015年7月に発行したAA型種類株式であろう。

 まず、AA型種類株式の概要を見ていく。