日経平均株価採用225社のうち71社が社外役員の兼務に一定の制限を設けている。例えば、日立製作所は、同社の他に4社を超える上場会社の役員を兼職しないことが望ましいとする(コーポレートガバナンスガイドライン)。

 兼任数以外の方法で制限をしている会社もある。東洋紡は、取締役・監査役候補者を決定するまでに、期待される職務の遂行に支障となるような兼務状況がないことを確認している(コーポレートガバナンスに関する報告書、2016年6月)。

 また、本田技研工業は、社外取締役及び社外監査役が他社から新たに役員就任の要請を受けたときは、その旨を社長に通知することを定めている(Hondaコーポレートガバナンス基本方針)。数といった形式的な基準ではなく実質を重視するところが興味深い。

 社外役員が取締役会においてどのような活動をすることができるかについては、個々の社外役員によって異なる。したがって、単に兼任数の上限を設ければ良いという問題ではない。現にコーポレートガバナンス・コード上、兼務制限については、各社の合理的な裁量に委ねられているのである。

 このような各会社の合理的な裁量の範囲に関して、亀田製菓はコーポレートガバナンスに関する報告書(2016年6月)で、合理的な兼任数のメドを定めつつ、これを超える場合であっても、取締役会で検討・決議を行うこととしている。

 他社の役員の兼任について、従来より当社では主に利益相反取引の観点から取締役会にて決議をしておりますが、当社の取締役・監査役業務に時間・労力を振り向けることができる合理的な上場企業役員兼務数の目途について当社を含め4社とし、これを超える場合には、そのリスクについて取締役会で検討し、問題がない場合は兼務を了承する旨の決議を行うことといたします。

「形式」から「実質」へ

 相談役・顧問制度の廃止や役員の兼務制限などを実行することで直ちにガバナンスが強化されるわけではない。肝要なのは、各社の実情に応じて自社のガバナンスについて検討し、株主などに必要な説明することである。

 機関投資家の判断も形式ではなく実質が求められている。議決権行使助言会社による助言サービスの利用に当たっては、助言者の質だけでなく助言そのものの質も具体的に検証するなど、自ら実質的な判断を行うことが求められよう。

 日本版スチュワードシップ・コードも、機関投資家は、議決権行使助言会社のサービスを利用する場合であっても、議決権行使助言会社の助言に機械的に依拠するのではなく、投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえ、自らの責任と判断の下で議決権を行使すべきとしている(指針5-4.)。例えば、議決権行使の判断が議決権行使助言会社と一致するのであれば、なぜ一致するのかなどを説明すべきであろう。

 議決権行使助言会社についても、形式的な企業の対応を助長する結果につながらないよう、実質的な判断を行うよう努めることが求められる。

 最後に、ISSが行った実質的な判断の例をあげたい。ISSが、自らの議決権行使助言方針を形式的に適用してはいない好例である。

 ISSは、取締役会の出席率が75%に満たない取締役の選任に原則として反対を推奨する助言方針を掲げているが、2016年6月、ソフトバンクグループの社外取締役である永守重信氏について、人物本位で評価して、出席率が55.6%であったにもかかわらず、永守氏の再任に賛成を推奨したのである。

 2017年はコーポレートガバナンス・コードが施行されて3年目であり、日本版スチュワードシップ・コードの改定も予定されている。コーポレートガバナンス改革を「形式」から「実質」へと進化させることがますます重要な課題となっている。

著者新刊『名経営者との対話』発売中

 18人の経営者との対話によって、日本にふさわしいコーポレートガバナンスとは何か、さらには資本主義とは何かについて明らかにした一冊です。

 対談の中で言及される、コーポレートガバナンスに関する専門知識については、該当箇所にキーワード解説を付記。また、キーワードは後半の「理論篇」ともリンクしているので、対談の内容を、理論で補完しながら読み進められる構成となっています。ぜひ、お読みください。