相談役・顧問制度に関する問題点

 ISSは、社長・会長経験者などが会社に残り続けることは、これらの者が他の会社で社外取締役として務める機会の減少につながり、このことが日本で社外取締役候補者の人材プールが充実しにくい一因であると指摘する。しかしながら、相談役・顧問が他社の社外取締役を兼任することも少なくないため、相談役・顧問制度が社外取締役の人材不足の原因とは必ずしも言えないだろう。

 いずれにしても、社長・会長が退任後に社外取締役になること自体は望ましいことである。独立社外取締役は、経営の方針や経営改善についての助言や経営の監督を行う役割を果たすことが期待されており(コーポレートガバナンス・コード原則4-7)、会社経営についての知見をどの程度有しているかが重要となるからである。経営トップやその経験者は、経営の経験が豊富であり、独立社外取締役として最適任であると考えられる。

 ISSは、現経営者に及ぼす影響という観点からも、相談役・顧問制度の問題点を指摘している。この点は重要である。社長・会長経験者などが相談役・顧問として会社に残っていることが原因で、後継者である現在の社長・会長が、前任者が決めた経営戦略を変更することが困難になることを指摘しているからである。例えば不採算事業について、相談役・顧問の思い入れが強い場合、その事業から撤退することが遅れてしまうおそれがあると考えられている。

 さらに、相談役・顧問制度に関しては、その透明性について投資家が懸念を抱いているという問題もある。ISS日本法人代表の石田猛行氏は、元の社長がアカウンタビリティー(説明責任)なしに会社経営に影響を及ぼすことが問題であると指摘している(経済産業省のCGS研究会第4回配布資料5。石田委員提出資料)。相談役・顧問は、取締役でない限り、その活動や報酬が開示されることはほとんどなく、株主総会での選任や株主代表訴訟の対象にもならない。このように、株主による監視・監督が及ばないにもかかわらず、会社の経営に影響を及ぼしうる相談役・顧問という制度については、海外の投資家から見て違和感があると言われている。

 以上に述べてきたとおり、相談役・顧問制度については複数の問題点が指摘されているが、一方でメリットもある。

 例えば、前述のとおり、相談役・顧問は会社の取引関係の維持・拡大などの役割を担っているほか、相談役・顧問が会社に残ることで、現経営者が日常的に経営に関する悩みを相談することも可能となる。現経営者が多忙である場合には、その代わりに、会社の社会貢献活動を担ってもらうことも考えられる。また、社長・会長のスムーズな退任を実現させるために次の席を用意しておくということも指摘されている。さらには、会社の継続性を社会に訴求することもできる。

 そもそも、相談役・顧問の実態は会社によって異なるのであり、やみくもに廃止すればよいという問題ではない。今回のISSの新助言方針をきっかけとして、それぞれが相談役・顧問制度について再検討し、制度の透明性やその役割・重要性などを株主などに説明することが重要であろう。透明性という観点からは、相談役・顧問の報酬総額や常勤か非常勤かなどを株主に開示することも考えられる。