ただし、新助言方針による直接的な影響は少ない。ISSの調査によると、28%の企業が相談役・顧問制度を既に定款に規定しているとのことであるが、そもそも相談役・顧問は会社法上の機関ではない任意の制度であり、相談役・顧問を設置する場合でも定款に規定する必要はないのである。ISS自身も、新たに定款変更により規定する企業はかなり少ないことを想定し、新助言方針の直接的な影響は少ないという考えを示している。

 ISSの新助言方針の意図は、相談役・顧問が影で影響力を行使することに対して、投資家の懸念が高まっていることをメッセージとして市場に伝えることにあると見られる。

 具体的なきっかけとなったのは、2015年の東芝の不適切会計事件である。当時、東芝には、多くの相談役や顧問が存在し(最多時で相談役5名、顧問27名)、社長、会長の経験者が80歳まで相談役としてアドバイスをしていると言われていた。現に、不適切会計事件の後のトップ人事を、当時相談役であった西室泰三氏が主導したと報道され、相談役が経営に大きな影響力を持っていたと言われている。

上場企業の6割で相談役・顧問が就任

 相談役・顧問制度については、2016年9月、経済産業省が、東証1部・2部上場会社を対象としてアンケートを実施している。アンケートの回答によると、少なくとも62%の会社において相談役・顧問が就任している。

 多くの会社において相談役・顧問に報酬が支払われており、個室やスタッフ、社有車を利用できるとしている会社も少なくない。相談役・顧問の役割としては、役員経験を踏まえた現経営陣への指示・指導と回答した会社が最も多かった。他にも、相談役・顧問は、事業関連活動(業界団体や財界での活動など)の実施や、顧客との取引関係の維持・拡大などの役割も担っているとのことである。

 このような役割を担っているとされる相談役・顧問だが、経産省のアンケートに回答した会社のうち相談役・顧問について何らかの見直しを実施、検討した、または検討中としているのは20.1%だ。5社に1社に過ぎない。各社ともそれぞれの判断と捉えているのであろう。

 東芝は、2016年6月、相談役制度に関する規定を削除する定款変更を行い、相談役制度を廃止した。顧問制度についても、役員退任者が一律に就任することを廃止している。

 また、日立製作所では、2016年6月、川村隆氏と庄山悦彦氏が相談役を退任した。これにより、相談役制度自体は廃止しないものの、日立製作所には相談役が不在となった。川村氏は、CEOに近い立場の人間が何人も社内に残ると社員やステークホルダーが混乱する、卒業生はCEOを邪魔せず、相談などを持ちかけられた時に自身の経験に基づいた助言をする役割に徹すべき、という趣旨の発言を行っている。将来の日立のために必要な措置であるという判断であると思われ、注目される。