2016年は、日経平均株価がいきなり3000円以上も下落する波乱の幕開けとなった。市場安定化と景気浮揚を目指す今後の政策運営を、日経新聞きっての論客、滝田洋一編集委員が読み解く。

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滝田 洋一(たきた・よういち)
日本経済新聞編集委員。金融部、チューリヒ駐在などを経て1995年編集委員。米州総局編集委員を経て、論説副委員長兼編集委員。2008年度ボーン・上田国際記者賞受賞。2011年4月から現職。深層を捉える経済解説で知られる。

 上海株の暴落で始まった2016年は、上海で再び転機を迎えた。かの地で開いた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、政策運営の大きな転換点となった。何といっても焦点は財政。景気失速防止のため、グローバルに財政出動の雰囲気が強まってきた。

 G20財務相会議で議長国となった中国が「財政出動の用意がある」と啖呵を切った。安倍晋三首相としては、日本が議長国となる日米欧の主要7カ国(G7)首脳会議に、このテーマを引き継ぐ構えだ。

 5月のG7の財務相会議(仙台会議)や首脳会議(伊勢志摩サミット)を舞台に、欧米諸国から再増税延期への支持を取り付けることを目指すだろう。米国が財政重視の姿勢を鮮明にし始めていることで、安倍首相は話を運びやすくなったと考えているフシがある。

日欧に財政出動を促す米国

 上海のG20財務相会議に先立って、国際通貨基金(IMF)が発表した「政策提言」の中では、財政政策に関するくだりが目を引く。「金融政策への過度の依存を避けるために、短期的な財政政策で景気回復を支援すべきだ」。日米欧について、次のように言及する。

●米国 財政赤字削減の中期的合意が、インフラ投資、生産性向上などへ資金を回す余地を提供する。

●ユーロ圏 特にドイツは、インフラ投資により成長を支援すべき。

●日本 財政健全化への関与が、成長の弾みを維持するための「短期的な政策余地」を作るだろう。

 世界経済が下振れしているとあって、財政政策の出番ですよ、というわけだ。日欧の金融緩和の継続を支持しつつ、IMFが財政による景気下支えを求めだした背景には、米国の影がちらつく。

 米連邦準備理事会(FRB)が利上げに転じるなか、日欧を中心に一段と金融緩和が進めば、ドルに上昇圧力がかかるからだ。とりわけ、人民元など新興国通貨に対してドル高なのは、米国にとって愉快ではない。だから、各国の財政出動に力点を置くわけだ。

 安倍政権にとっても渡りに船だ。7月の参院選、場合によっては衆参同日選を控えて、景気対策の補正予算編成が容易になる。