今、ワインが人気だ。実はここ数年は「第7次ワインブーム」と言われ、日本のワインの消費量は過去最大を更新している。今なぜ、ワインが人気なのか? その背景には、安くて美味しいワインが手軽に入手できるようになったという面もあるが、忘れてならないのが「健康にいい」というイメージだ。
 今回は、ワインの醸造方法と価格、製造過程で加える酸化防止剤、そして最近話題の自然派ワインについて詳しく見ていこう。

赤ワインは黒ブドウを原料に、果皮や種子ごと発酵させる。写真は代表的な黒ブドウ品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」。(©Magdalena Paluchowska -123rf)
赤ワインは黒ブドウを原料に、果皮や種子ごと発酵させる。写真は代表的な黒ブドウ品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」。(©Magdalena Paluchowska -123rf)
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 最近は、安くておいしいワインが手軽に入手できるようになった。しかし、ワインと一口に言っても、価格はもちろん、味わいはさまざまだ。ワインに健康効果があるといっても、どんなワインでも等しく健康効果があるのだろうか。また、醸造過程で加えられるという「酸化防止剤」を気にする人も少なくない。最近では、「自然派ワイン」「ビオワイン」などと呼ばれるワインも人気で、専門店も増えている。これらは普通のワインと何が違うのだろうか。

 今回は、メルシャン酒類研究所所長を務め、醸造と健康効果両方の研究に取り組んできた山梨大学ワイン科学研究センターの佐藤充克客員教授にこれらの疑問を聞いていく。

安いワインと高いワインは何が違う?

 まずは、ワインの製造方法を簡単におさらいしておこう。ワインの原料は、ご存じの通りブドウ。ブドウを搾った果汁を酵母によりアルコール発酵させてできたお酒がワインだ。

 赤ワインを例にもう少し詳しく説明しよう。赤ワインの場合、材料になるブドウは黒ブドウ。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ピノ・ノワールなどが代表的な品種だ。このブドウの実を破砕し、果皮や種子ごと発酵槽に入れる。ここに酵母を入れ(ブドウについている天然酵母を使うケースもある)、アルコール発酵させる。アルコール発酵とは、ブドウに含まれる糖分が酵母によりエタノールへと変化する過程のこと。この過程によりブドウに含まれる糖分は消費されるため、ワインに含まれる糖質は少なくなる。

 発酵槽では、数日から1カ月程度かけて発酵(主発酵)およびポリフェノールなどの抽出(醸し)を行った後、乳酸菌によってリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解するマロラクティック発酵(乳酸発酵)が行われる。

赤ワインの製造過程
赤ワインの製造過程
赤ワインは果皮や種子も含めて発酵させるのがポイント。発酵後のワインは、酵母や酒石などのオリ(澱)が沈降する。これを取り除くのがオリ引き
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