気を通わせれば、緊張することなく話せる
私は合気道で気の鍛錬を始めてから、心のコントロールができるようになってきました。かつては会議などで意見が対立すると、イラッとしているのが声や態度に出てしまうことがあったのですが、今は心をしずめることで、落ち着いて穏やかに対応できるようになってきたような気がします。役員から「以前とは変わってきた」と言われることもあります。
また、私は講演をする機会が多いのですが、かなりの場数を踏んでいるので、今では数千人を前にしても、緊張することなく話せます。合気道を始めてからは、意識的に「気を出す」ことで、その場の空気をつかめるようにもなってきました。
「気を出す」とは、「気と気をつなぐ」「気を通わせる」といった意味です。水は流れがあると清らかですが、滞ると腐ります。それと同じように、自分の気と人の気を滞らせることなく、うまくつないで通い合わせることができれば、その場の空気を把握できるようになります。
人前で上がることなく話すコツ
プレゼンや会議など人前で話すときに緊張してしまう人は、気が上がった状態になっています。そうなると、聞いている人と目を合わせないようにしてしまう人もいます。でも、それは気が閉じた状態なので、余計に上がってうまく話せなくなります。緊張して上がらないようにするためには、まず呼吸を調える。それだけでも落ち着いてきますが、さらに気を出すようにしてみるといいでしょう。
具体的には、その場にいる人全員でなくていいので、目についた人を見て、自分の気を向けるようにします。例えば、「あの人は緑色のネクタイをしているな」「向こうの人は黒縁のメガネをかけているな」というように意識していくと、気をつないでいくことができます。
気を出してつなげるようになってくると、自分が落ち着いて話せるだけでなく、話している相手の心が読めるようにもなります。話を聞いているだけでは言葉通りに受け取れることでも、相手の全体をじっと見て気を通わせていると、「言葉ではこう話しているけど、心では本当はこう思っているな」ということが分かってくるのです。ですから、人と話をするときは、なるべく気を通わせたほうがいい。会議やプレゼン、面談や採用面接などでも生かせますよ。
(まとめ:田村知子=フリーランスエディター、写真:小野さやか)
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ネクスト社長

この記事は日経Gooday 2016年10月3日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
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