睡眠の質改善やダイエットにも効果がある

既に述べた通り、マインドフルネスはストレスを原因とする障害や疾患に効果があるといわれる。 >うつや不安障害、ストレス性のぜんそくについては、人によってかなりの効果があるという報告がある。
睡眠の質が低い人にマインドフルネス瞑想や、歩くことや食べることに集中する「歩きの瞑想」「食べる瞑想」などのトレーニングを受けてもらい、自宅で毎日5~20分の瞑想を行ってもらったところ、睡眠の質が改善したという報告もある(※3)。
また、ストレスが原因でやけ食いをしたり、早食いが原因で食べ過ぎになりがちな人には、マインドフルネスがダイエット効果をもたらしてくれるという研究報告もある。「今、自分は食べている」ということに意識を向けることで、「どんな味がするのかゆっくり味わおう。ああ唾液が出てきたな。よく咀嚼(そしゃく)しよう」といった意識が明確になり、じっくりと時間をかけて食べるようになるからだ。
先に述べたように、左海馬の灰白質の密度が増すために、学習記憶や感情コントロールの向上が期待できたり、側頭頭頂接合部の灰白質の密度が増すことで、思いやりや共感力の向上が期待できるというメリットもある。さらには、ストレス低減によって免疫システムの向上に効果があったという報告もある。
いずれにしても、マインドフルネス瞑想を1回やったからといって、すぐに結果が出るわけではない。筋トレと同じく継続が大切である。越川さんによれば、マインドフルネス瞑想は1回に45分間ほど続けるのが理想的だが、まずは時間のあるときに5分でも10分でも行ってみるとよいとのこと。大きなストレスに身を置いている人ほど、効果を感じやすいという。
最近では、マインドフルネスを体験できる各種イベントが各地で開催されているほか、マインドフルネス瞑想をサポートするスマートフォンのアプリもある。興味がある人はそういったものを活用してみるのもいいだろう。
※1 Khoury B, et al., Mindfulness-based therapy: A comprehensive meta-analysis, Clinical Psychology Review, 2013 August; 33(6):763?771.
※2 Holzel BK, et al., Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density, Psychiatry Res.:Neuroimaging 2011 Jan 30; 191(1): 36?43.
※3 Black DS, et al., Mindfulness Meditation and Improvement in Sleep Quality and Daytime Impairment Among Older Adults With Sleep Disturbances,JJAMA Intern Med. 2015; 175(4): 494-501.
(まとめ:二村高史=ライター、プロフィール写真:shimizuchieko)
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早稲田大学文学部長、日本マインドフルネス学会理事長

1982年早稲田大学第一文学部心理学専修卒業。精神科クリニックに臨床心理士として勤めた後、同大学大学院文学研究科博士後期課程心理学専攻を経て、同大学文学部助手、同専任講師、同助教授、2002年より同教授。2013年に日本マインドフルネス学会理事長、2014年に同大学文学学術院長・文学部長に就任。専門は臨床心理学、特にマインドフルネス瞑想の抑うつや不安に対する効果やその効果機序。
この記事は日経Gooday 2016年4月18日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
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