近い将来、最先端テクノロジーで便を分析すれば、その人の健康状態や病気のリスクが分かるような未来がやってくる。そして、この情報を基に、腸内フローラのバランスを食事で適切にコントロールすれば病気予防にもつなげられる。しかし、今はまだ研究段階だ。そこで、現段階で我々にできることを腸内環境研究者・福田真嗣さん(メタジェン代表取締役社長CEO/慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授)に聞いてみた。
うんちをしたら、勇気をもって振り返ろう
前回の記事では、便は“茶色い宝石”という話をした。「便にはその人の腸内環境情報がたくさん含まれており、それらがその人自身の健康や病気とリンクするのであれば、ある意味で“究極の個人情報”ともいえる」(福田さん)からだ。しかし、一般の人が最先端テクノロジーを利用して便を調べることができるようになるには、もう少し時間がかかる。
「現段階でできることは、便の状態をよく見て、食生活を改善していくことです。腸内環境に影響を与える第一要因はやはり食習慣ですので、普段から食べたものと出た便の状態を記録しておくといいでしょう」(福田さん)
便は消化できなかった食べ物の残りカスだけでできていると思っていないだろうか? しかし、「便から水分を除くと、残りには食べ物のカスだけでなく、剥がれた腸粘膜や腸内細菌も含まれています。これらの割合は状況によって変わり、不溶性食物繊維が多い食事をすれば食べ物の残りカスの割合が増えますし、大腸炎などの疾患時には剥がれる腸粘膜の量が増えます。消化管に出血があれば血液なども含まれるようになります。便にはこういった腸内環境情報がたくさん含まれているので、重要なポイントは、トイレで便をしたら勇気を持って振り返って見てみることです」(福田さん)
つまり、便を見ること=おおまかな腸内環境状態を知ることだったのだ!
食事はスマートフォンで写真に撮れば簡単だし、便は、回数、色、におい、量などをメモしておくといい。勇気があれば便を写真に撮ってもいいだろう。
「ウンログ」などの記録アプリを利用するのも手だ。下記のような表を作って管理するのでもいい(下記の便記録シートのダウンロードはこちら)。
「家族や友人と食事の話はよくしても、便の話はしにくいものです。ましてや、自分の便と他人の便を見比べることはまずない。ですから、みなさん自分の便が普通だと思っています。しかし、アンケートをとってみると、便の状態は実にさまざま」(福田さん)。次ページのグラフを見て、自分と他人の“便事情”を比べてほしい。
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