最強なのは自分の腸内細菌をカプセル状にしたサプリ!?

「便移植は生の便を大腸に注入するものですが、治療に必要な腸内細菌を便から単離・培養し、カプセルに詰めて薬として利用する研究も進んでいます。これは腸内細菌カクテルと呼ばれています。もちろんこれは医療用ですが、究極的には、病気にならないことが大事だと思いますので、私たちは、自分自身の便から取り出した腸内細菌を自分の腸内環境維持のためのサプリメントとして活用する方法を研究しています」(福田さん)
外来の菌はそう簡単に腸にすみつけないことは第1回「善玉菌、悪玉菌と単純には分けられない!腸内フローラの真実」で述べた。
「その人が健康なときの便からその人自身の腸内細菌を取り出し、培養してカプセルに詰めてサプリメントにします。これをパーソナライズド・プロバイオティクスと呼んでいます」(福田さん)
もともと自分の腸内にいた菌だから、自分の腸内環境に適応しやすく、定着する可能性が高いのだという。
様々な可能性を秘めた便。そのため、福田さんは便を “茶色い宝石” と呼ぶ。
「便の中には、腸内フローラの遺伝子や代謝物質の情報が含まれていて、これらの情報から、その人の健康状態や病気のリスクを評価できる可能性があります。その情報をもとに生活習慣を改めることで、病気を防ぐことができ、健康寿命を伸ばせるかもしれない。便には値が付けられないほどの価値があるんです」(福田さん)。
このように腸内フローラと健康状態には深い関係があるが、気になる自分の腸内フローラの状態について現段階で調べるにはどうすればいいのか。次回はそのテーマ、便から健康状態を見極める方法について解説しよう。
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メタジェン代表取締役社長CEO/慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授

1977年生まれ。明治大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。学位取得後、理化学研究所研究員として勤務し、2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。2011年にビフィズス菌による腸管出血性大腸菌O157:H7感染予防の分子機構を世界に先駆けて明らかにし、2013年には腸内細菌が産生する酪酸が制御性T細胞の分化を誘導して大腸炎を抑制することを発見、ともに「Nature」誌に報告。2015年、メタジェン(慶應義塾大学と東京工業大学のジョイントベンチャー)を設立。著書に『おなかの調子がよくなる本』(KKベストセラーズ)。
この記事は日経Gooday 2016年5月20日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
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