(1)健康
   ↓
(2)食習慣の乱れなどで腸内フローラのバランスが乱れる
   ↓
(3)腸でよくないものが作られて体内に吸収される
   ↓
(4)体はいい状態を保とうとする
  (恒常性があるので、すぐには悪くならない)

   ↓
(5)腸でよくない物が作られ続ける
  (自覚症状がないため、腸によくない習慣を続ける)

   ↓
(6)最終的に体内の恒常性が破綻し、病気になる

 「体内は恒常性を保つ力が強いため、(2)の状態から(6)になるまでにはある程度の時間がかかります。ですので、例えば血液を調べてもその兆候はあらわれにくい。しかし、腸内は体内と比較すると恒常性を保つ力が弱いので、病気の兆候を早く検出できる可能性があります。腸内フローラのバランスの乱れに早く気がついて良い状態に戻すことが、腸内フローラの乱れが素因となる病気の予防には重要だと考えられます」(福田さん)

 腸内フローラのバランスの乱れに気がつく方法は、今の段階では、「便を観察すること」に尽きるという。その方法は本シリーズの第3回で紹介しよう。

便が高値で取引される時代になる?!

腸内環境研究者でメタジェンCEOの福田真嗣さん(左)と、同社技術顧問の井上浄さん(右)。手前のパソコン画面に写っているのはオンラインで取材に応えてくれた副社長CTOの山田拓司さん
腸内環境研究者でメタジェンCEOの福田真嗣さん(左)と、同社技術顧問の井上浄さん(右)。手前のパソコン画面に写っているのはオンラインで取材に応えてくれた副社長CTOの山田拓司さん

 腸内フローラのバランスの乱れが原因と考えられる病気といえば、その治療法として注目されているのが「便細菌叢(そう)移植」、通称「便移植」だ。これは、「病気の人の腸内に、健康な人の腸内フローラを内視鏡を用いて移植する治療法です。腸内フローラを総入れ替えすることで、病気を治療するという発想から生まれた」(福田さん)ものだ。

 具体的には、健康な人の便を生理食塩水に混ぜてろ過して液体を作り、患者の大腸内に注入するという。なんとも素朴な方法だ。

 「現在、便移植による治療効果が証明されているのは、偽膜性腸炎です。これは、腸内でクロストリジウム・ディフィシルという菌が異常に増えてしまう腸管感染症ですが、抗菌薬治療による効果が出にくく、治りにくいのが特徴です。ところが、偽膜性腸炎患者に便移植をしたところ、90%以上に治療効果があったという海外の研究報告があります」(福田さん)

 これは、驚くべき結果だ。日々何気なく排泄し、汚い、臭いと蔑みさえしてきた便が、難病治療に役立つとは!

 将来的には、糖尿病や大腸炎など、腸内フローラの乱れと関連があると考えられる疾患の治療に、便移植が使われるようになる可能性があるという。となると、健康な人の便が高値で取引される時代になるかもしれない。

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