ストレスと腸内フローラも関係がある?

下痢や便秘も、もちろん腸内フローラと大いに関係がある(©ljupco 123-rf)
下痢や便秘も、もちろん腸内フローラと大いに関係がある(©ljupco 123-rf)

 大事な会議やプレゼンの前になると下痢をしたり、旅行先や出張先で便秘になったりしたことはないだろうか。実はこれらも腸内フローラと関係している可能性があるようだ。

 「脳と腸は迷走神経でつながっていて、ホルモンを介しても常にやりとりを行っています。脳がストレスを感じると腸に伝わり、腸のぜん動運動が変化し、結果として便秘や下痢が起きる場合があります。一方で、ある種の乳酸菌を摂取すると迷走神経を介して脳に作用し、ストレスを感じにくくする、という研究結果もマウスを用いた実験ですが報告されています」(福田さん)

 心理的なストレスによって腹痛が起こり、下痢を伴うこともあるのが過敏性腸症候群だ。急な便意に悩まされている人も多いだろう。「過敏性腸症候群は、本人にプレッシャーを与えている原因を解決しなければ根本的な治療にはなりませんが、腸内フローラのバランスを改善することにより、症状を和らげることはできるかもしれません」(福田さん)

 こうした病気は、私たちの「遺伝子型」「食習慣」「腸内フローラ」の3つの悪い要素が重なることで発症すると考えられる。このうち「遺伝子型」は変えることができないが、「食習慣」と「腸内フローラ」はコントロールすることが可能だ、と福田さん。だからこそ、腸内環境を整えることは私たちの健康維持にとって非常に重要といえる。

腸内フローラをコントロールすれば病気を防げる

 腸内フローラの乱れが体の不調へとつながる過程について、もう少し詳しく見てみよう。ポイントとなるのは、私たちの体内で発揮される「恒常性」を維持する力と腸内でのその力の違いだ。

 「私たちの体内には恒常性を維持する力があります。これは、体をある一定の状態に保つことで定常状態を維持する力のこと。例えば、食後に血糖値が上がっても、インスリンが分泌されて血糖値を下げ、一定のレベルに抑えます。しかし、おなかの中はちょっと違います。腸内は体の内側にありますが、実は外側なんです。よく『内なる外』とも呼ばれますが、ドーナツの穴を考えてもらえれば分かりやすいかと思います(*)。したがって、体の内側と比べると腸内はこの恒常性を維持する力が弱いのです。逆に言うと、ある程度なら変化を許容しますので、腸内環境は可変性があるということ」(福田さん)

 腸内環境は、ケアをすればそれなりの効果が得られやすいということだ。

 次ページで示すのは、その逆で、健康な人が病気になってしまうひとつのパターンだ。

*編集部注:「内なる外」とは、腸が身体の内側にありながら、外界と接していることをいう。ドーナツの穴は内部ではなく外部であることから、腸をそのように例えたもの。穴の空いた「ちくわ」を例にする場合もある。

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