疲れたときの体の変化(3)NK(ナチュラルキラー)活性などの免疫力が低下する

 ストレスや疲れに伴う免疫系の異常として、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性の低下がよく知られている。NK活性はウイルスに感染した細胞の処理にも重要な働きをしており、この働きが低下するとウイルスに対して抵抗力が弱くなり、風邪を繰り返したり、感冒様症状が続いたりする原因となる。NK活性は血液検査で調べることができる。

 「NK活性などの免疫力を調べることで、ストレスや疲れに伴う体の変化を客観的に評価することができ、病気の診断や治療に役立つことがわかってきています」(倉恒さん)

疲れたときの体の変化(4) 活動量(覚醒度)が落ちる

 疲れてくると、仕事や歩行など1日のうちに行うさまざまな活動の量も落ちてくる。活動量の評価には多岐にわたる方法があり、1日の消費エネルギーなどでとらえることもできるが、睡眠時間や日中の居眠り、睡眠効率など睡眠覚醒リズムに関連する指標も疲労のバイオマーカーになる

 例えば「アクチグラフ」(米国A.M.I社)という腕時計タイプの睡眠覚醒リズム計測器がある。もともと米国で軍事用に開発されたもので、睡眠学研究者が国際学会の論文発表に利用したり、NASAの宇宙飛行士が利用している研究用機器だが、これを使えば覚醒時の居眠り回数や睡眠時の中途覚醒回数などが計測でき、1分間あたりの活動量がどの程度維持できているかを読み取ることができるという(図1)。

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腕時計タイプで小型ながらも精密な計測ができるアクチグラフ。左が従来から使われているマイクロモーションロガー型。右は簡易版の睡眠ウォッチマン型(画像提供:サニタ商事)
日中の自覚しない居眠りまで計測
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マイクロモーションロガー型の解析データ。覚醒時の居眠り回数(緑色の▲部分)や睡眠時(赤い線の部分)の中途覚醒回数などを計測、疲れていると1分間あたりの活動量が低下して居眠り状態が増えるという。「自覚してなくても脳波は居眠りの状態に落ちていることもあるんですよ」(倉恒さん)。(画像提供:サニタ商事)

疲れの状態を数値化して健康管理に生かす時代へ

 疲労を数値などで客観的に表すことができれば、さまざまな疲労回復法(詳しくは「疲れ解消に効果のある7つの生活習慣と7つの成分」参照)について、本当に効果があるのか、どのくらいの効果なのかといったことを検証することが可能になる。

 先に触れた自律神経バランスの測定器については、現在、家庭用のものが開発中、アクチグラフも近々個人向けの販売が始まる予定だという。こうしたものが商品化されれば、家庭や公共施設・スポーツクラブなどで血圧を測るのと同じように、手軽に自律神経の状態や活動量(覚醒度)を計測できるようになる。近いうちに、疲れの状態を数値化して健康管理に生かすことが当たり前になる時代が来るかもしれない。

倉恒弘彦(くらつね ひろひこ)さん
関西福祉科学大学健康福祉学部教授、東京大学特任教授
上西一弘(うえにし かずひろ)さん

1987年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。2003年より現職。同年より大阪市立大学客員教授。2009年より東京大学特任教授。厚生労働省「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班代表研究者、日本疲労学会理事などを務める。著書に『危ない!「慢性疲労」』(共著、NHK生活人新書)など。

この記事は日経Gooday 2016年4月5日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。