「なるべく演奏会を続けてください」と言われて

休業の期間は目処をつけていたのですか。

中村 休業することにはしたものの、実は3月6日に、私が音楽監督をしている浜松の国際ピアノアカデミーのオープニングリサイタルがありました。それはずいぶん前から引き受けていたし、これをやらないと、アカデミーの成功にも関わります。これだけは、どうしてもやりたいと思っていたんですね。

 そうしたら、今度の先生は演奏活動にとても理解を示してくださるんです。「月に1回程度でもいいから、なるべく演奏会を続けてください。演奏会をやると活力がわくので、それががんをやっつけるにはいいんです。それに中村さんが演奏することで、同じ病気で悩んでいらっしゃる方の励みになりますよ」と。

 それで、「先生、どうしても3月のオープニングリサイタルをやりたいんです」と言ったら、抗がん剤の投与をずらしたりして、調整してくださいました。

 でも、抗がん剤って、思いがけないことが起こるものなんですね。抗がん剤を入れてから、家でしばらく猛練習をして、浜松に行って演奏会をやって、その翌日から1日6時間くらいレッスンをやって。レッスンでは、自分で弾くこともしました。

2014年11月23日サントリーホールでのリサイタル(ジャパン・アーツ提供)
2014年11月23日サントリーホールでのリサイタル(ジャパン・アーツ提供)

 そうしたら、大変なことになったんです。ええと、何度聞いても覚えられないんですけど、ヒョロヒョロとかフィルフィルとかいう名前の治療法で…。

「腕が飛行船みたいに膨れちゃった」

FOLFIRI療法(*)ですか。

中村 それ、それです。かわいい名前ですよね。それに、抗がん剤のベバシズマブ(商品名アバスチン)が入っていて。

 ピアノを弾くと腕を使うものだから、腕の筋肉が膨張するんです。連日弾き続けたので、がっちり膨れあがって、そのために血行が悪くなって、腕に血栓ができちゃって。