人間の「やめられない」には、ネズミと違うメカニズムがある?

 「ただ、ここからは、最近改めて考えたのですが…」と、伏木さんは身を乗り出してきた。

 「ネズミと違って、人間にとって本当にやめられない食べ物って、こういう刺激的な味よりも、ちょっと薄味に抑えた辺りのゾーンにあると思いませんか?」。

 ふむふむ。確かにいわれてみると、脂っ気が強いB級グルメや、砂糖と脂肪のダブルパンチが利いたコテコテのスイーツは、強烈な快感を得られるけれど、「やめられない味か?」と問われると、ちょっと違う気もする。むしろ、刺激が強い分、満足感も意外と早めに湧いてくる。

 それに対して、本当に「やめられない味」というのは、それこそあのCMソングのスナック菓子のような、味はやや薄めで、風味が効いた感じ…。

 「そうなんです。味はむしろ控えめで、ちょっと物足りないぐらい。その分、香りで郷愁がそそられるようなものの方が、よほどやめられないと思うのです。ポップコーンとか、おかきとか。ポテトチップも、濃厚なバーベキュー味よりも、実は“うす塩”ぐらいの方が止まらない」。

 うーむ。ポテチの話は個人の嗜好のような気がしないでもないが、でも分かる気もします。

 「でしょ? 私はこのような、やや薄めで風味のある味を『寸止めの味』と呼んでいます。報酬系を興奮させるB級グルメ的な味は、実は飽きるのも早い。寸止めに抑える方が、飽きがこず、心地よさを長く持続させられる。ここにネズミと違う、人間特有の“やめられなさ”があるように思うのです」。