糖尿病になると甘いにおいが

 では実際、体臭でどんな病気が分かるのだろうか。

 例えば、糖尿病になると「甘いにおい」がすると言われる。「糖尿病の初期は尿や体から甘いにおいがするが、進行すると甘酸っぱいにおいになる」と外﨑さん。糖尿病が進んで糖がうまく代謝されなくなると、糖の代わりに脂肪がエネルギー源として使われるようになる。この結果、体内で生成されるのが、アセトン(ケトン体)という物質だ。甘酸っぱいにおいで、「ケトン臭」と呼ばれる。これが血液とともに全身を巡るため、汗や尿、吐く息、体臭が甘酸っぱくなるというわけだ。心当たりのある人は、ぜひ糖尿病の検査を!

 なお、糖質を制限するダイエットをしていると、同様に甘酸っぱいにおいが出てくることがある。このため、ケトン臭は「ダイエット臭」などと呼ばれることもある。

 また、ずばり甘い香りを連想させる病気もある。「メープルシロップ尿症」という乳児の病気だ。その名前の通り、メープルシロップのような甘いにおいの尿や汗が出る。必須アミノ酸のロイシン、バリン、イソロイシンを代謝する酵素が働かないために起こり、治療をしないと発育障害などを来し、死に至るケースもあるという。「赤ちゃんの尿や体から甘いにおいがするので、お母さんが気づくことが多い」と外﨑さん。

胃腸障害があると酸っぱいにおいや腐敗臭が

 これとは逆に、尿や体が嫌なにおいになる病気も。代表的なのが、魚が腐ったようなにおいがする「トリメチルアミン尿症(魚臭症候群)」やカビ臭い「フェニルケトン尿症」だ。いずれも特定の酵素が欠損しているために起こる。乳児や幼児に見られ、体臭が病気発見のきっかけになることが多い。

 このほか、胃もたれなどの胃腸障害があると、吐く息に酸っぱいにおいや腐敗臭が混じることも。「酸っぱいのは胃酸のにおい。腐敗臭は、胃の働きが悪いため食べたものが胃内に留まって発生します」(外﨑さん)。腐敗臭は、他に歯周病や慢性副鼻腔炎(蓄膿[ちくのう]症)でも起こりやすい。

 尿を作る腎臓に腎炎などの病気があると、アンモニアのにおいがすることもあるという。また、ひどい便秘の場合は、便臭がすることも。「便秘の場合は、2つの経路で便のにおいが体臭に混じる可能性があります。一つは、便のにおい物質が血流に乗って全身を回るルート。もう一つは、腸内のガスが胃や食道、気道へと、げっぷのように逆流するルートです」と外﨑さん。ためこみ過ぎるのは、危険! 便秘は軽いうちに解消しておきたい。

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