「単発型」の7~8割は自然に治る
平安時代に「頭を鬼になめられた後」という意味の「鬼舐頭」(きしとう)という言葉があったが、実はこれが円形脱毛症を指していた。
以来、原因不明の脱毛と考えられてきたが、最近では研究が進み、根本的な原因として考えられているのは、“自己免疫反応”という現象だ。免疫は、細菌やウイルスなど外敵から身を守るための仕組みだが、体の中での働きが過剰になると、自分自身の組織を攻撃してしまうことがある。
齊藤部長は「脱毛が起きている組織を調べてみると、免疫細胞が皮下の毛根部の組織を攻撃していることが分かった。最初は数本だが次第に周囲へ放射状に広がっていく」と話す。そのため、この病気は脱毛部の境界が明確で、はっきりとした円形・楕円形になっていくのだ。
私たちの体には、円形脱毛症における自己免疫反応に対抗する仕組みもある。一定の大きさに広がると脱毛が止まり、やがて脱毛部に産毛が生えてきて数カ月から半年ほどかけて治っていく。
齊藤部長は「本人が気づかないうちにごく小さなものができて、治っていることも多い。頭に硬貨大の脱毛が1カ所だけある場合を『単発型』というが、その7~8割の人は自然治癒している」と話す。
境界の毛が簡単に抜けるようなら要注意
問題は、時に自己免疫の炎が広く燃えさかったり、体のあちらこちらに飛び火してしまったりする場合があることだ。例えば、硬貨大の脱毛が数カ所にできてしまう『多発型』、頭髪全体が抜けてしまう『全頭型』などだ。眉毛、まつげ、ヒゲ、さらには全身の体毛が抜けてしまう場合もある。「単発型から多発型、全頭型の順に進行することが多いが、時には単発型から急速に全頭型へ進む人もいる」(齊藤部長)。
こうなる前に積極的な治療が必要だが、単発型のときに症状が進むかどうかを見極めることもできるようだ。齊藤部長は「脱毛の境界部の毛をつまんでみて、簡単に抜け、痛みがないとき。抜けたときの毛髪の毛根部が細くとがっているときは、さらに脱毛が広がっていく可能性がある」という。
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