まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

 専門商社の営業課長を務める32歳。生き馬の目を抜くようなこの世界で必要なのは何よりもバイタリティだ。先日も社内を闊歩していると、後ろからやってきた同期社員が「ははは、お前も大変だな」と言って肩を叩いた。部長と打ち合わせをすると「いつも頑張っているんだから、たまにはゆっくりしたら」と気持ち悪いねぎらい。なんだか変だぞと思いながら、気合いを入れるためにいつもの理髪店へ。すると「お客さん、耳の後ろの毛が抜けてますね。あまり切らないでおきますね」と一言。なんと円形脱毛症になってしまったのだ。ライバル達は「あいつ案外、ストレスに弱いんだな」と陰口叩いているに違いない。く……、くやしいっ。

(イラスト:川崎タカオ)
(イラスト:川崎タカオ)

 仕事のトラブル、職場の人間関係、そして家族問題。ビジネスパーソンはみな、たくさんの問題を抱えストレスいっぱいだが、それでもなんとか平然と生きている。ストレスなんて人に察してもらいたくはない。だって男だもん。

 それなのに、突然、男の頭に「ストレス印」のスタンプを押すように現れるのが円形脱毛症だ。女性にも起こる症状だが、髪の短い男性は隠しようがないことも多いのでバレバレだ。米国では人口の0.1~0.2%に発生するというデータがあり、日本人でも同程度の割合と考えられている。

ストレスは根本的な原因ではない

 気になるのは、原因がストレスに関係あるのかということ。円形脱毛症治療に積極的に取り組んでいる横浜労災病院皮膚科の齊藤典充部長は「ストレスが円形脱毛症の症状を誘発する場合もあるが、根本的な原因ではない」と話す。

 にもかかわらず、誰でも何らかのストレスを抱えているので、それが原因不明の脱毛や湿疹などに結びつけられることが多かった。

 円形脱毛症は命にかかわる病気ではないが、適切な対処を怠ると症状が長引いたり脱毛領域が広がってしまうことがある。まずは根本的な原因を正しく知ることが大切だ。

次ページ 「単発型」の7~8割は自然に治る