そもそもポリフェノールとは?

板倉弘重さん。1961年、東京大学医学部卒。同大学第三内科講師を経て、国立栄養・健康研究所臨床栄養部長に。この間、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ心臓血管研究所研究員として留学。1996年に国立健康・栄養研究所を退官。脂質代謝、動脈硬化、抗酸化物質、老年医学を専門とする。
[画像のクリックで拡大表示]

今回は、コーヒーに含まれるポリフェノールについて伺いたいと考えています。板倉先生は、長年にわたってポリフェノールの抗酸化作用について研究されてきました。まず、そもそも「ポリフェノールとは何か」から教えていただけますか。

板倉さん ポリフェノールは、植物由来の抗酸化物質の1つです。植物が自らを守るために作りだした成分なので、ほとんどの野菜や果物に含まれています。その種類は7000~8000種類ともいわれています。ちなみに、フェノールというのはベンゼン環にOH基(ヒドロキシ基)が1つ付いた有機化合物で、これが複数つながったのがポリフェノールです(詳しくは「健康効果というと、なぜ赤ワインばかりが取り上げられるのか」を参照)

 コーヒーのクロロゲン酸をはじめ、大豆のイソフラボン、お茶のカテキン、タマネギのケルセチン、赤ワイン、ブルーベリーに含まれるアントシアニンなどもポリフェノールの仲間です。植物由来の抗酸化物質には、ポリフェノール以外にも、ビタミンCやE、色素成分のカロテノイドなどがあります。

クロロゲン酸には、複数の形態がある。上図の右側はクロロゲン酸の1つ「5-カフェオイルキナ酸」。なお、ポリフェノールとは、フェノール(図の左側)が複数結合した化合物の総称。
[画像のクリックで拡大表示]

 ポリフェノールは、活性酸素による酸化からカラダを守ってくれます。これが抗酸化作用と呼ばれているもので、カラダにいい影響を及ぼすのです。

 そもそも私がポリフェノールに着目したのは、動脈硬化についての研究を始めたことがきっかけでした。

 1960年代に大学を卒業して医師になったばかりのとき、私は東京大学の第三内科に入局したのですが、そこで教授から「動脈硬化について研究しないか」と誘われたのです。当時は、動脈硬化を促進する要因となる「油」についての研究を主に行っていましたが、その後、国立健康・栄養研究所に移ってからは、「動脈硬化を促進するのは活性酸素によって血管内にできる酸化コレステロールである」という視点で研究を進めました。

 そこで赤ワインに豊富に含まれるポリフェノールの抗酸化作用に注目して研究を進め、赤ワインのポリフェノールが動脈硬化を予防する作用があることや、脂肪の吸収を抑制する効果があることなどを明らかにしたのです。その結果を、1994年に英国の医学雑誌「Lancet(ランセット)」において発表しました。その後は、ココアポリフェノール、お茶のカテキンなど、さまざまなポリフェノールの研究をしてきました。