聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。

あなたはどんな人に心ときめかせるだろうか。
一般的には、男性は女性を好きになり、女性は男性を好きになる。でも、現実にはそうでない人たちも、もちろんいる。男性のことが好きな男性、女性のことが好きな女性、そして両方が好きな男性と女性も。こういった違いはどうして生まれるのだろうか。埼玉大学大学院理工学研究科生命科学部門准教授の塚原伸治さんに聞いてみた。
「男性と女性では見た目も違うし、体の中の構造も違います。例えば女性には子宮や卵巣があって子供を産むことができますが、男性にはそういった臓器がなく、もちろん、出産もできません。生物学的な男女の違いは歴然としてあります。実は、脳にもこのような性差があり、それが異性を好きになるか、同性を好きになるかという『性的指向』を決めているのです」
なるほど、好きも嫌いも理由は脳の中にあり、というわけだ。
脳の「前視床下部間質核」の大きさが性的指向を決める?
塚原さんによると、性的指向を左右しているのは、脳の「前視床下部間質核」(ぜんししょうかぶかんしつかく)という場所だという。何やら難しい名前だが、視床下部という言葉は聞いたことがあるかもしれない。脳のほぼ真ん中の間脳という場所にあって、体温調節やホルモン分泌、摂食、性行動などを司っている器官だ。ここの一部分である前視床下部間質核は、異性を好きになる“異性愛男性”と、同性を好きになる“同性愛男性”では、そもそも大きさが異なっているという。
「この部分は、男性の方が女性よりも神経細胞(ニューロン)の数が多く、大きさも2倍以上あることが分かっています(大きさを左右する原因は不明)。ところが、同性愛男性の場合は、異性愛男性よりも小さく、女性とほぼ同じ大きさだという報告があるのです。男性でこの部分が小さいと、女性が男性を好きになるように、男性も男性を好きになると考えられるわけです」(塚原さん)
なお、同性愛の女性に関しては、研究報告がないため、はっきりしたことは分からないそうだ。
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