会社組織の変化から、「男らしさ」の呪縛に苦しめられている男性たちの現状を伝えた前2回。今回は、海原さんが考えるストレスからの脱し方、そして心身症の予防法をお聞きした。

人は誰でも回復力《レジリエンス》を持っている

ほんのちょっとした行動でストレス状態から抜けられる。(©alphaspirit 123-rf)
ほんのちょっとした行動でストレス状態から抜けられる。(©alphaspirit 123-rf)
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――海原先生へのインタビューの第1回「『男らしさ』に追いつめられる男性が増加中!?」の中で、働き盛りの40~50代の男性が直面している深刻なストレスについてうかがいました。こうしたストレスに対し、心がけるべき予防策はありますか。

 ストレス解消法といわれる方法はいろいろありますが、一過性の解消法に頼るのではなく、自分の人生を根本的に考えなければいけないと思います。女性は「自分らしい生き方」についてずっと考えてきましたが、男性は生き方というよりも「仕事の成功」に重きを置いてきましたから、特にその必要があると思います。

 ストレスなどから回復する力のことを心理学用語で「レジリエンス」と言いますが、人は誰でもこのレジリエンス持っており、その力を鍛えることで心身症の予防は可能です。こんな風に言うと「じゃあ何か一つ方法を教えてください」と聞かれるんですが、一つですべてを解決することはさすがに不可能です(笑)。レジリエンスは性格要因やものの捉え方、サポートしてくれる人の有無といった総合力なので、人それぞれに強化のポイントは変わってきます

「自己表現」が最強のストレス対策

 ただしストレスに強い人の共通点として言えるのは、回復力を高めてくれるリソース、つまり自己表現の場をたくさん持っていることです。第1回の記事で、我慢強くコミュニケーション力が高い「良い人傾向」の人は心身症になりやすいとお伝えしましたが、もちろん元気な人はたくさんいます。そうした人は趣味が充実していたり、ペットを飼っていたり、広い意味での自己表現の場を持っていることが多いんですよ。

 ストレスは怒りや不満を黙って抑え込むことによって生じることが多いので、レジリエンスUPには、抑え込んだ感情を表現する場を生活の中でどれだけ持てるかが肝要なのです。自己表現というと高尚な感じがするかもしれませんが、ジムに行って体を動かすことも立派な自己表現の一つです。また、自分の気持ちをノートに書くことはもちろん、買い物をする、マッサージを受ける、いつもと違うルートで帰ってみる、本屋さんに行く、温かい飲みものを飲むなど何でもいい。そうやって体を緩めたり、心のリラックスにつながることすべてが「自己表現」と言えます

 ですからまずは、自分が心地良いと感じられること――嫌なことがあったとき、これをやると元気になる――といったことを思い出して書き出し、リソースとして把握してみてください。それがひいては、「自分らしい生き方」にもつながってくるのではないでしょうか。ただし、お酒とタバコ、ギャンブル、歓楽街以外で楽しみを探してくださいね。

――自己表現というと敷居が高いイメージがありましたが、難しく考えず、自分が心地良くなることをやればいいんですね。自己表現以外で、意識すべきことはありますか?

 自己表現と重なるものもありますが、メンタルヘルスを維持する上では、当然、「深呼吸」「適度に体を動かす」「睡眠」「気持ちを話せる家族や仲間」「自然との触れ合い」の5項目は基本となります。これらを意識的に整えるだけでもかなりストレスが軽減されるので、ぜひ覚えておいてください。

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