――心身症を患ってしまった働き盛りの男性たちに、共通するサインなどはありますか。
困ったことに、彼らの見た目は普通なんです。ビシッとスーツを着こなして会社にきちんと行くし、仕事もちゃんとこなしている。でも、話を聞いたりストレスチェックをしたりすると、内面はボロッボロ。よくこんな状態で毎日働いているなと思うことがよくあります。一見何事もないように見えるから、周りの人は気づかないんですね。
仕事ができる社員ほど、強いストレスを感じても怒りや感情を抑圧し、一見平然としながらも心の中では大きなストレスを抱えているということを、上司の立場にある方には覚えておいていただきたいですね。
特に男性は女性と違って、心の病を他人に悟られることを「負け」と思いがち。男性にとっては、体の病気は“勲章”だけれど、心の病はただの“弱さ”なんですよね。それを認めることが嫌だから、内科や耳鼻科に行ったり大がかりな検査を受けたりしてどこか体に疾患がないかと、躍起になって探そうとする。それで体の異常が見つかると「やっぱりね」と喜んでしまうんです(笑)。
「睡眠」「食欲」「気分」に現れる心のサイン
――心身症を患うと、具体的にはどういった症状が見られるのでしょう。また、自分でできる心の病かどうかの判定基準はありますか。
多くの場合、不眠や胃腸障害、めまいが見られます。タバコ依存やアルコール依存も多いですね。いずれにしても睡眠と食欲、気分にはっきり現れるので、眠れない、食欲がない、何をしても楽しくないといった状態が2週間以上続いたら、無理せず病院に行ってみてください。
――一方で、激務でも心身ともに元気な方もいますよね。やはり心身症になりやすい気質などがあるのでしょうか。
これは個人の性格も大きく影響していて、忍耐強く協調性もある“良い人傾向”の強い人は、心身症になりやすいかもれません。また、考え方に柔軟性がなく、ちょっとした失敗も許せない、いわゆる「完璧主義者」も危ないです。
こういった性格要因に加え、趣味がなかったり友人が少なかったりすると、生活の中に自己表現する場所がなく、鬱憤がたまりやすくなってしまいます。
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社会の変化によって、「男らしさ」が足かせとなり追いつめられる男性たち――。まさに自分のことだと感じている人も多いかもしれない。次回は、働き方とストレスの関係と、現代の会社組織が直面している問題についてお伝えしていく。
医学博士

この記事は日経Gooday 2016年2月18日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
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