「男はなぜこんなに苦しいのか」「もう限界」。こんな衝撃的なタイトルと帯を持った書籍が発行された。心療内科医で日本医科大学特任教授の海原純子さんの著作だ。1980年代から女性の心身症を専門にカウンセリングを行ってきた海原さんだが、近年、ストレス性疾患を患う男性が増えていることを実感。看過できない現状を受け、警鐘を鳴らす意味で本書の執筆に至ったという。現代男性の身に今、何が起きているのか?

「男らしさ」に追い詰められる男性たち

「男はこうあらねば」という呪縛から、ストレスを一人で抱えていませんか?(©Pablo Hidalgo 123-rf)
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――海原さんが本書を執筆するに至った理由を教えてください。

 リーマン・ショック後、現場で40~50代の男性のストレス性疾患が増えていると感じるようになったからです。例えば、日中はバリバリ仕事をしているけれど毎晩気を失うほどお酒を飲まずにはいられない「隠れアルコール依存症」になる人や、これまでのスキルが通用しなくなり適応障害に苦しむ人、どんなに頑張っても人事評価で報われずうつ状態になる人…。そんなケースが多く目につくようになったことから、もっと早い段階で予防してほしいという気持ちで本書を執筆しました。

 それまで、男性は真面目に働いていればそれで良いという時代が長くありました。いったん就職してしまえばそう簡単にクビになることもないし、とりあえず会社にいれば年功序列で給料は上がりました。しかしここ10年、特にリーマン・ショック以降は企業のリストラが加速し、会社は成果主義になりました。加えてPCやネットの急激な普及によってそれまでの働き方やスキルが通用しない局面も増えましたよね。また、きちんと結果を出しているのに、自分の意に沿わない評価を受けてしまうこともあるでしょう。

 こうした社会情勢の変化によってやる気を削がれた上に、「男らしく振る舞わなければならない」という呪縛によって自らを追い詰めてしまう男性は非常に多い。これは何とかしなければならないと思ったわけです。

――社会進出を始めた女性が「良き妻・良き母」像の狭間で悩んできたように、今度は男性が「男らしさ」によってがんじがらめになっているということでしょうか。

 そうです。これまで自分の存在価値を仕事にしか見出してこなかった男性が職場でうまくいかなくなったら、当然それはとてつもなく大きなストレスとなって跳ね返ってくるわけです。でも、多くの男性はローンがあるし家族を支えなくてはいけないから、仕事を辞めるわけにもいかない。なんとか騙し騙し会社に行っても、そこで邪魔者扱いされたり、能力を活かした仕事をさせてもらえなかったり、正当な評価を受けられなかったりする。

 かといって、かつて悩みを語り合った同僚たちは40~50代になると皆ライバルになってしまっていて、本音を語ることは難しい。「男はこうあるべき」という自己イメージが強いので、仕事を離れた場所や家庭でグチを言ったり、自分の弱さを露呈するようなことはなかなかできない。そうこうするうちに、不眠になって食欲もなくなり、ついに体が悲鳴を上げ始める。そんな男性が増えているのではないかと思います。