赤ワインは認知症にも効果あり
抗酸化作用に加え、昨今、注目されているのが果皮に含まれるリスベラトロールだ。聞き慣れないこのポリフェノールは、脳の機能を円滑にし、記憶力の回復やアルツハイマー病を予防する効果があるという。
「ボルドー大学中央病院が65歳以上の3777名を対象に、飲酒量と死亡率、認知症、アルツハイマー症のリスクを3年間にわたって調査したところ、驚くべき結果が出ました。ワインを毎日3~4杯(375~500ml)を飲んでいるグループと、非飲酒グループでの発症リスクを比較したところ、認知症は5分の1、アルツハイマー症は4分の1、死亡率は約30%低下したことがわかったのです(1997年発表)。これはリスベラトロールが、外界刺激を伝達する酵素『MAPキナーゼ』を活性化するためと考えられています」(佐藤教授)
リスベラトロールが、老化を抑制する機能を持つサーチュイン遺伝子を活性化させ、寿命を延ばすという報告も発表されている。2006年には、リスベラトールによってマウスの寿命が延びるという論文が発表された(J.A. Baur, D.A. Sinclair et al. (2006): Nature 444,337-342)。高カロリーのエサを与えるとマウスは短命になるが、リスベラトロールを同時に与えると普通食と同様に生存したというものだ。この発表により、アメリカではリスベラトロールのサプリメントが売り切れる事態になったという。日本でも複数のメーカーが「長寿遺伝子を活性化させる」「アンチエイジング」などとうたってサプリメントを販売している。
赤ワインにはリスベラトロールが10mg/L程度含まれる。日常的に飲む酒を赤ワインに変えれば、こうした効果の恩恵に多いにあずかれそうだ。
赤ワインには、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の殺菌作用もある。カリフォルニア州立大学フレズノ校の実験では、市販の赤ワインなどが15分以内にピロリ菌の増殖を阻害したという結果が出ている(1996年発表)。このほか、佐藤教授らの研究によって、血液の柔軟性が増し、毛細血管の血流が促進されることもわかっている(1999年発表)。
このようなさまざまな研究結果を見ていくと、数あるお酒の中で、なぜ赤ワインばかりがフィーチャーされるのか、その理由がよくわかる。
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