アルコールが「歯周病」を促進させる

 山本教授が言うように、口臭の原因が歯周病であるならば、アルコールは関係ないのだろうか?

 「アルコールがどのようにして歯周病を進行させるのか、その機序は明確になってはいません。ただしヒトを対象にした疫学研究において、アルコール摂取の多い人ほど、歯周病の罹患率が高いことが報告されています」(山本教授)

 なんと!アルコールと歯周病は無関係ではなかったのだ。

 韓国において40代を中心とした男性8,645人を対象にした調査によると、日常的にアルコール摂取する習慣のある人は、アルコールを飲まない人に比べ1.27倍、歯周病のリスクが高かった(出典(1))。またブラジルにおける1,115人を対象にした調査では、1日に純アルコールにして9.6グラム(日本酒に換算して1/2合)以上、「飲んでいる女性」は、「飲まない女性」に比べ、歯周病リスクが3.8倍との報告もある(出典(2))。さらに山本教授が行ったラットの実験でも、アルコールと歯周病の関係性が明らかになっている。

 「歯周病に罹患していないラットにアルコールを過量(人に換算して泥酔状態)に摂取させると、歯を支える歯槽骨が著しく吸収しました。さらに骨の周囲には活性酸素が作られ、体の抗酸化力が下がっていることも分かりました。このことからアルコールは歯周病のリスクを高めるだけでなく、歯周病の進行とともに、体を酸化させる恐れもあるわけです」(山本教授)

 さらに山本教授によれば、アルコールによって、抗利尿ホルモンが抑制され、尿が頻繁に排泄されることで脱水のような症状が起こると、その影響で唾液が減少するという。これが口腔内の環境を悪化させ、細菌が繁殖しやすくなることにつながる。そして「ここに喫煙が加わると、さらに追い打ちをかけることになる」と山本教授は話す。

 「喫煙者が歯周病にかかるリスクは、タバコを吸わない人と比べて、最大8倍にもなるとの報告もあります。喫煙により歯茎の血流が悪くなり、さらにヤニに歯垢がつきやすくなるために、バイオフィルムと呼ばれる強固な歯周病菌ができるためです」(山本教授)

 最近では“スメハラ”(スメルハラスメント)という言葉もあるように、歯周病による口臭が原因で、人間関係に支障が出ることも十分あり得る。だからといって、酒を断つことなんてまずできない。何か予防策はないのか、山本教授に問うてみた。

 「歯周病の予防には歯磨き(ブラッシング)に勝るものはありません。ブラッシングに最適な時間帯というものはありませんので、朝、お昼、夜などに時間をかけてしっかりとブラッシングをすることが重要です」(山本教授)

【論文出典元】

(1)「Journal of Periodontology」(2014年85巻1521~1528頁)
著者:Park JB, Han K, Park YG, Ko Y.
論文タイトル:Association between alcohol consumption and periodontal disease: the 2008 to 2010 Korea National Health and Nutrition Examination Survey.

(2)「Journal of Periodontal Research」 (2014年50巻622~629頁)
著者:Susin C, Wagner MC, Haas AN, Oppermann RV, Albandar JM.
論文タイトル:The association between alcohol consumption and periodontitis in southern Brazilian adults.